共同コミュニティ「Cift」で共に暮らす住人の懐妊で、新たな家族の誕生を祝う/倉田貴志撮影
共同コミュニティ「Cift」で共に暮らす住人の懐妊で、新たな家族の誕生を祝う/倉田貴志撮影

 社会活動家・石山アンジュ。人は血がつながっていなくても家族になれるか。そんな試みのもと、約60人が「新しい家族」として東京・渋谷に住んでいる。石山アンジュは、この共同コミュニティー「Cift」の立ち上げ人の一人。これからの時代は、人とのつながりが資産になるという。奪わない、独り占めしない。自分の余白を差し出し、それをシェアし合って人がつながることができたら、世界だって平和になる。

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 朝のニュース番組「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)で木曜日のコメンテーターを務める社会活動家の石山(いしやま)アンジュ(33)は、目の前に繰り出されるニュースに対し黒白をつけず、なぜそんな事件が起きたのか、背景を探ろうとするコメントが多い。一見、物足りなさを感じる時もあるが、白黒間のグレーゾーンを巧みな言葉で紡ぎ出し、視聴者のもやもや感を解消する瞬発力に驚かされることもあった。

 コメンテーターは知恵や経験という膨大な分母があって適切な言葉を生み出す。だが、石山は見るからに若い。外交から国際政治、環境、エネルギー、事件、そしてスポーツニュースまであらゆる社会事象に対応する視野の広さはどこから来るのか。石山の背景が知りたくなった。

 ある日、番組を終えたばかりの石山を自宅に訪ねた。白のコットンシャツに麻のパンツ、サンダル履きで出迎えてくれた石山に、数時間前に画面で見た凛(りん)とした姿はなく、笑顔の奥に無邪気さものぞかせる。

「モーニングショーのレギュラーになって1年以上経ちますがいまだに慣れません。ストレスが溜(た)まりまくりです」

 20代後半から若者代表のような立ち位置で、報道番組のゲストに呼ばれることはあったものの、レギュラーの話が来たときは、自分に価値があるコメントができるのか、逡巡(しゅんじゅん)したという。だが、他の番組を視聴者目線でチェックすると、視聴者と一緒に理解していく補足的なコメントがありがたいことに気づいた。ニュースに善(よ)し悪(あ)しを明確にした方がすっきりするが、その背景には複雑な事象が幾重にも絡み合い、一刀両断できないと石山はいう。

「ニュースって対立構造やヒエラルキーで論じられるものがほとんどなので、自分のコメントのせいでさらに分断をあおったり、人を傷つけないよう気をつけています。私の発言の根底にあるのは、人間にもともと備わっている良心を諦めたくない、という信念」

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約60人の新しい家族と東京・渋谷に住む