血がつながらなくても家族
自分の弱さもさらけ出せる

その信念は、石山の住む共同コミュニティーCift(シフト)でも生かされている。Ciftは渋谷駅から徒歩5分、渋谷キャストの13階にある。石山らクリエーターたちが、血がつながっていなくても家族になれるかという「新しい家族」の試みとして5年前、「意識でつながる拡張家族」というコンセプトで設立した共同コミュニティーだ。
現在、0歳児から60代まで、19部屋に60人余りが住む。京都にも拠点があり、Ciftの全家族は102人。職業も多様でコンサルタント、料理人、ミュージシャン、LGBT活動家、僧侶など、住人の肩書を足すと100業種を超えるという。
それにしても、人生観や価値観が違う人たちが、同じ空間に暮らすことで、すぐに家族になれるだろうか。代表でもある石山が即答する。
「最初に4者面談といって、4人のメンバーと希望者の話し合いが行われます。まあ、お見合いみたいなものですね。そこで、私たちと一緒に暮らしていく中で自分が変われるか、そして何があっても対話を諦めないことを徹底確認します。採用基準があるわけじゃないけど、この二つができない人に家族になってもらうのは厳しい」
一般のシェアハウスとCiftの形態は違う。シェアハウスは長く住んで住人間の距離が縮まるが、Ciftはいきなり家族として迎え入れられる。それぞれの部屋とは別に60平方メートルほどのスタイリッシュなリビング、磨き抜かれた広い台所があるが、思い思いにその場所を使っている住人たち同士に遠慮は見えない。
赤ちゃんが生まれたときはみんなで世話をし、シングルマザーの子育てを手伝い、住人の親の介護が必要となれば、代わる代わるケアに行ったり弁当を届けたりする。毎日のご飯は手のすいた人が作り、施錠されていないドアを開き「ごはんだよー」と声をかける。言うなら、大家族のような様相だ。子どもたちも「きょうだい」が増え、年長たちは逞(たくま)しくなった。
「血はつながっていなくても子どもたちは愛おしいし、自分の弱さもメンバーにはさらけ出せる。つまり自分の心が拡張していくことを実感できるんです。それは他のメンバーも同じだと思います」