これからの大切な6年間を決める中学入試。「相性のいい学校」を選びたい (c)朝日新聞社
これからの大切な6年間を決める中学入試。「相性のいい学校」を選びたい (c)朝日新聞社
教育ライター 佐藤智さん(39、左):横浜国立大学大学院修了、中学校・高校の教員免許を取得。著書に『公立中高一貫校選び 後悔しないための20のチェックポイント』などがある/教育家 小川大介さん(47)/京都大学卒業後、コーチング主体の個別指導塾を創設。6千人を超える受験生の相談に乗ってきた。現在、幼児教育から企業人材育成まで幅広く活動中
教育ライター 佐藤智さん(39、左):横浜国立大学大学院修了、中学校・高校の教員免許を取得。著書に『公立中高一貫校選び 後悔しないための20のチェックポイント』などがある/教育家 小川大介さん(47)/京都大学卒業後、コーチング主体の個別指導塾を創設。6千人を超える受験生の相談に乗ってきた。現在、幼児教育から企業人材育成まで幅広く活動中
AERA 2021年3月8日号より
AERA 2021年3月8日号より

 中高一貫校の人気が止まらない。進化し続けるほど悩みが尽きなくなるのが、「学校の選び方」だ。相性の良さをつかむには、さまざまなポイントがある。AERA 2021年3月8日号で、教育家の小川大介さんと、教育ライターの佐藤智さんが語り尽くす。

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──今年はコロナ禍での中学入試になりましたが、影響は。

小川大介:私立中学の出題傾向には、変化がありました。小学生の学習の遅れに対応し、中学校側も知識量の範囲を狭めて出題の難易度を下げたことで、必然的に、ただ暗記してきたものをアウトプットするのではなく、「その場で考え、判断する力」を求める思考力型入試の色合いが鮮明になりました。この傾向は来年以降も続きそうで、適性検査と作文による公立中高一貫校の入試内容と、だんだん近いものになっていくのかもしれません。

 ただ、ひと言でいうと親御さん、お子さんともに「疲労困憊の入試」でした。受験校選択で安全策をとるご家庭が増えたことで、最難関校は志望者数を減らし、たとえば東京だと青稜や日本大学豊山などの私立中高一貫は、もともと人気の中堅校だったのがさらに狭き門になりました。結果、「安全校がどこか」がわからなくなり、情報戦のようなことも起きました。

■「例年通り」ができない

 一方でお子さんも、「思うように勉強ができなかった」というメンタル面での不安感、負い目を感じながら入試に突入した結果、入試当日に踏ん張りきれず、模試の判定では80%が続いていたような子が「全滅」するなど、本当に可哀想なケースも例年に比べて多く聞いてます。

佐藤智:疲労困憊は現場の先生方も同様でしたね。「例年通りにやる」ができないということは、こんなに大変なのかと。

 学校が行う説明会も、コロナでなかなかやりにくかったようです。地方の公立中高一貫校の先生に話を聞いたのですが、完全オンラインでやったところは倍率が下がってしまって、オンラインと小規模な説明会を繰り返して行った学校は倍率を維持できた、と。そこをふまえると、来年以降はハイブリッドでやる傾向になっていくと思います。

小川:興味深かったのは、2019年にできた私立のドルトン東京学園は、個別相談会を何回も開いたんです。入学をさせるための相談会というよりは、そのお子さんなりのライフプラン、どんなふうにどんな環境で育っていきたいかという「目的」のところを先生と一緒に考えてみよう、という形で。もともと熱狂的なファンのいる学校ですが、ご家庭とのコミュニケーションを分厚くする方針を立てていると、必然的に一方通行型のオンラインで片づけようとは思わない。その証しだなと思います。

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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