寄付への感謝の会に集った人たち。子どもがNICUに入院した家族も一緒になって寄付を募り、その輪が広がっているという(撮影/諏訪友理)
寄付への感謝の会に集った人たち。子どもがNICUに入院した家族も一緒になって寄付を募り、その輪が広がっているという(撮影/諏訪友理)

 小児医療の現場を寄付が支えている。集まったお金で必要な備品などを購入したり、子どもたちを喜ばせる品物を揃えたり。寄付した側も幸せになる。笑顔の連鎖があった。AERA 2019年12月16日号では、寄付の持つ力に迫る。

*  *  *

「小児医療と寄付は親和性がとても高い」

 と語るのは、『寄付をしてみよう、と思ったら読む本』の共著者でNPO法人日本ファンドレイジング協会代表理事の鵜尾雅隆さん(50)だ。

「宗教的に神との契約関係が寄付の動機になりにくい日本では、共感と次世代への継承が寄付の大きな動機で、小児医療への寄付はその二つを満たすものです」

 日本では寄付の文化が根付かないと言われているが、「寄付白書2017」によると、東日本大震災が起きた11年には、68.6%の人が寄付をし、その後も震災前と比べて寄付市場は拡大を続けている。10年に4874億円だった個人の寄付は、16年には7756億円と約1.6倍に増えている。

 鵜尾さんは、寄付は金額以上の価値を生み出すと指摘する。

「寄付でもらうお金には、応援者の思いが詰まっていて、受け取る側のやる気を生み出します。加えて、寄付した人自身にとっても気づきや学びを得る機会になり、寄付した人がその体験をシェアすることでいろいろな連鎖が生まれます。社会全体のお金の量は変わらない中で、幸せの量を増やす方法が寄付だと思います」

 その指摘通り、新生児集中治療室(NICU)のリニューアルを寄付で実現させた、神奈川県立こども医療センターの新生児科部長・豊島勝昭さんは寄付について「お金を超えた励ましを感じています」と話す。やはり寄付を活用した名古屋大学大学院医学系研究科小児科学教授の高橋義行さんも「病院としての思いを外に発信したことで、院内のスタッフの意識も高まる波及効果がありました」と振り返る。寄付には金額以上のエネルギーがあるのだ。

 寄付をした人たちも幸福感を得ていた。

次のページ