1999年生まれ。一昨季、昨季とGPファイナル、世界選手権を連覇。2018年にエール大学に入学。学問との両立について、「黙々とスケートをしていても追い詰められることなく、バランスがとれる」と語った(撮影/今村拓馬)
1999年生まれ。一昨季、昨季とGPファイナル、世界選手権を連覇。2018年にエール大学に入学。学問との両立について、「黙々とスケートをしていても追い詰められることなく、バランスがとれる」と語った(撮影/今村拓馬)

 昨季のフィギュアスケート世界選手権で、羽生結弦を抑えて世界王者となったアメリカのネイサン・チェン選手。エール大学に通い文武両道を貫く彼にインタビューした。AERA 2019年10月21日号に掲載された記事を紹介する。

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──昨季はGPファイナル、世界選手権と連覇しました。

ネイサン・チェン(以下、チェン):メダルという形になるものを取れたことは嬉しいですが、重要なのはそれぞれの試合で得た自分自身の感覚、経験の蓄積です。どうやって試合でのメンタルをうまく持っていき、どこまで練習の成果を発揮できたのかという経験が、今後の練習や目標に繋がっていきます。

──昨季はエール大学に入学して1年目でした。

チェン:スケート以外に自分自身を表現できる場を得たということが、大きな変化でした。二つは、まったく違う目的、努力、ゴールがあり、僕の人生は充実しています。大学では統計とデータ科学を勉強しています。

 一番の課題は時間管理。大学の試験期間にスケートの試合がかぶらないことを願うばかりです。普段の授業でしっかり理解できていれば試験に臨めるのですが、まだそんなに器用ではないので。

──大学に通うことで、ラファエル・アルトゥニアンコーチから離れて練習しなければならないこともあります。難しさは?

チェン:もちろん難しいですが、夏に一緒に練習した時に、僕が大学で自主練習する時に困らないように、ジャンプの具体的な理論を一つ一つ教えてくれました。彼は常に「自立して練習しなさい」と言います。コーチの顔色をうかがうのではなく、自分自身で練習の目標や計画を決めることに慣れているので、自分に責任を持って練習できています。

──今季のショートは「ラ・ボエーム」。フリーはエルトン・ジョンの映画「ロケットマン」の曲ですね。

チェン:ショートは今までと同じく振り付けをシェイリーン・ボーンに依頼しました。昨季までの「キャラバン」や「ネメシス」は現代的な曲でしたが、今度はシャンソンで、全く違う方向性でワクワクしています。これまでの恋愛経験や、幼少期の思い出などを演技に投影しながら、新しい表現をしていきたいです。

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