ハイルマニイの顕微鏡写真。動物実験では感染力が強いことがわかってる(中村医師提供)
ハイルマニイの顕微鏡写真。動物実験では感染力が強いことがわかってる(中村医師提供)
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 人畜感染菌「ハイルマニイ」が、胃炎やがんを引き起こすリスクがあることが、最新の研究でわかってきた。飼いや犬からも感染する可能性がある。AERA 2019年9月23日号から。

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 ピロリ菌と同じヘリコバクター属の「ハイルマニイ」という菌がある。このハイルマニイがペットや家畜から人に感染し、胃がんとは異なる悪性腫瘍を引き起こす危険が指摘されている。北里大学薬学部講座研究員で消化器内科の中村正彦医師はこう話す。

「ピロリ菌は霊長類にしか感染しませんが、ハイルマニイは人畜共通の感染菌です。豚に多く、日本では7割が感染していたという報告がある。さらに猫は室内飼いでも約半数、犬も3割が感染していることがわかっています。人間にもペットの唾液や糞便から感染する可能性があります」

 ピロリ菌は感染しても胃の粘膜層にとどまっているが、ハイルマニイはさらに深い壁細胞の中などに潜り込み、ピロリ菌で起こる胃炎とは異なるタイプの胃炎を起こす。さらに「胃MALTリンパ腫」という悪性リンパ腫を、ピロリ菌が陰性でも引き起こす可能性がある。胃MALTリンパ腫の発症頻度は高くはないが、胃にできる悪性リンパ腫の約40%を占めている。

「ピロリ菌とハイルマニイは共存できないので、すでにピロリ菌に感染している胃にはハイルマニイはほぼ感染できません。若い世代ではピロリ菌の感染率が低くなり、中高年以降も除菌が進む今後は、ハイルマニイの感染が増加することが懸念されています」

 中村医師は現段階での感染予防策として、▽犬猫に口や鼻を舐められないようにする▽犬猫の唾液や糞便を触ったら手を洗う▽豚の腸は十分加熱して食べる▽調理器具から感染しないように気を配る、といったことを挙げている。

「感染を簡便に調べる方法が開発され、実用化される見込みです。今後感染の状況がさらに明らかになり、対策も進んでいくことが期待されます」

(ライター・谷わこ)

AERA 2019年9月23日号