●極意その2 最期の迎え方を決めておこう

「医師の話に納得がいかないが、直接は聞きにくい」「家族と診療方針について意見が合わず、つらい」。そんな時、がんに関しては「がん相談支援センター」を利用しよう。がん診療連携拠点病院やがん診療指定病院に設置されている。

 京都大学大学院特定准教授の大塚篤司医師は、「緩和ケアに関する相談も積極的にするといい」と話す。かつて緩和ケアは治療を諦めた人が、モルヒネなどを用いて静かに予後を過ごすものと捉えられていたが、現在はがんの診断時から通常の治療と並行して行うことが推奨されている。早期に緩和ケアを受けた患者は、そうでない患者に比べ生存期間が延びたという研究もある。

「担当医に緩和ケアの要望を伝えづらい時には、まずはセンターに相談するといい」(大塚医師)

 神奈川県の病院の循環器内科医師(36)が勧めるのは、がん末期や高齢で寝たきりの家族の心肺機能が停止した際の対応を、事前に決めておくこと。同医師は救急医として現場に駆けつけることが多い。家族に「身内の○○が来るまで生かして」と頼まれ、蘇生措置をすることも頻繁にある。

「心臓マッサージで肋骨はバキバキに折れる。そういう最期が本当にご本人や家族にとって幸せなのか、いつも考えさせられる」
 最悪の事態の対応は、状態が悪くない時からかかりつけ医も交えて決めておきたい。

●極意その3 謝金や菓子折りは「気持ち程度」

 手術前に現金の入った封筒、いわゆる「袖の下」を渡す。古い慣習に思えるが、渡せば何か違いがあるのか。

「謝金・菓子折り」について医師にアンケートを取ったところ、「基本的に受け取らないが、断れない場合もある」が最多の46%、「謝金・菓子折りとも基本的に受け取る」が28%、「菓子折り程度なら基本的に受け取る」が19%、「断固として断る」が8%。意外に受け取っている。

 だが、その理由は「なんとなく」「断るのも悪い」「押し問答の時間が無駄」「ご厚意をむげにできないので」などライトなものばかり。渡さないからといって、治療内容に差をつけることは、多くの場合なさそうだ。菓子折り・謝金を受け取らない旨明示する病院も増えているなか、「渡さなければ悪い結果になる」と思い悩む必要はまずないと言っていい。(編集部・石臥薫子、小長光哲郎)

AERA 2019年9月23日号

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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