「給食の様子を観察していれば、健康状態、交友関係、生活環境の変化など、その子のことがよくわかる」と小嶋園長。さくらしんまち保育園では毎月、100人の園児ひとりひとりの給食の状況を話し合う会議を行っている(撮影/写真部・小黒冴夏)
「給食の様子を観察していれば、健康状態、交友関係、生活環境の変化など、その子のことがよくわかる」と小嶋園長。さくらしんまち保育園では毎月、100人の園児ひとりひとりの給食の状況を話し合う会議を行っている(撮影/写真部・小黒冴夏)

 楽しいはずの給食の時間が苦痛だという子どもたちがいる。背景には時間優先で余裕がなく、「黙食」をさせざるを得ない学校の実情がある。

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 給食を苦痛にするものに「食べる時間の短さ」がある。日本スポーツ振興センターの食生活実態調査(10年度)によると、小中学生が給食を残す理由の3位は「時間が短い」。

 他業種を経て教職に就いた40代の女性が、小学校の現場でカルチャーショックを受けたのは、時間優先で楽しさが排除された給食風景だった。

「もぐもぐタイムといって、20分のうち頭半分ほどは黙って食べないといけないんです。おしゃべりしたり、ふざけたりすると、給食の時間内に児童が食べ終えられないからです。全然楽しそうでなくて、食育に逆行しているような気が……」

 記者が今回の特集を組むきっかけとなったのも「黙食」だ。アエラ18年12月10日号の学校特集「不自由が9割」で取り上げた学校では時間内に収めるため全員が前を向いて食べねばならず、私語は禁じられていた。食べることの好きな小学1年生の女児が、おいしいものを食べると「おいしいね」と言ってしまい、初めての食べものを見ると「これ何?」と聞いてしまう。そうすると先生にシーッと注意されてしまうため「給食の時間が怖い」と泣いたというエピソードがあった。これに対し「子どもの主体性を尊重すべきだ」「忍耐力よりも、会話を楽しみながら食事するスキルのほうがグローバル時代には大事では」など多くの反響があった。

 しかし黙食は、やり方や程度に多少の違いはあれど、実施している学校や教員は少なくない。

 自身、もぐもぐタイムを一時期導入したことがあるという小学校教員の20代の女性は言う。

「あと5分でも食べる時間が余分にあったら……と思いますが、カリキュラムがぎゅうぎゅうで調整の余地がありません」

 4時間目の授業が延びたり、配膳に手間取ったりすると、食べる時間は圧迫される。とりわけ小学校の低学年は手がかかる。時間内に食べさせるタイムマネジメントは教員にとっても負担で、30代の男性教員は自身が落ち着いて食べる暇はないと言う。

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