団体職員の女性(50代)も小学生の長男に「うちの子どもをやめていただければ」と声を荒らげてしまった。何度言っても残した給食のパンをかびさせてしまう、ベッドの上でお菓子を食べて食べかすをばらまく。そういうタイプの子だとわかっていても、心がざわつく。家庭の事情で飼えない生き物を飼いたいとごねはじめた時に、感情があふれかえってしまった。

 いっそ、自分が泣いてみせたほうがいいと思うこともある。

「親でも泣くことがあるんだと子どもに思わせると、こちらの言葉が伝わりやすくなりますね」

 豊田真由子議員のように、仕事相手に感情を“崩壊”させる人はめったにいない、と思いたい。でも子どもや親や配偶者ら、親しい家族相手ならどうだろう──自分の中にもトヨマユが眠っているかもしれないと思った人は、少なくないのではないか。

 中部地方に住む30代の公務員女性は、件のトヨマユ動画を見た夫からぼそっと「どこかで聞いたことあるわ」と言われた。

「家族に対するものの言い方が、どんどんきつくなっていると自覚しています」

●「なんだこれドアホ」

 夫は仕事もしながら家事もやるしご飯も作ってくれる。感謝しているつもりだが、そのやり方の雑さが目につく。しばらく夫に任せていた台所に入ると、シンクが驚くほど汚れている。「なんだこれは!」とつい口調がきつくなる。掃除を始めるとご飯作りが後回しになり、子どもを保育園に迎えに行く時間もずれ……。夫に言えば「細かいことを言うなよ、少しぐらいしょうがないじゃない」と抗われ、さらに募るイライラ。

「子どもが1歳のころから、夫に『あなたは仕事だけしてればいいから楽だよね!』とか強い言葉をどんどん言うようになってきました」

 腹が立つと悪態をつくことに慣れてしまい、職場でも変な書類が回ってくると「なんだこれ、ドアホ!」と声に出すように。当然、周りはドン引き。書類の不備を見つけて「こんな面白い書類をなんで作ったんですか?」とイヤミをまくしたて、「正論だったとしても言い方があるだろう」とたしなめられたことも。

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