●口に出して「ガミガミ」

 2人の子育てに悩む40代の自営業の女性は、「怒りの感情はふたをしたほうがいいとばかり言われる。どうしてなのでしょう」と首を傾げる。

 不登校の長女、塾に月謝を振り込んだのに全然通わない長男。怒っちゃいけない、必要なのは「受容と共感」だと自分に言い聞かせるが、自分の価値観から外れたことをされると、感情の高ぶりが抑えられない。

「私はこれだけがんばってきているのに、それを否定された気持ちになると感情があふれてしまうんです」

 感情がひたすら“ダダ漏れ”では家庭の崩壊は必至。上手なコントロール法はあるだろうか。

 疲れて帰ってきているのに、最近発売された家庭用のシューティングゲームにすっかり夢中の夫。イライラする、ガミガミ文句を言ってやりたい。そんなとき、会社員の女性(50代)は本当に夫に対して「ガミガミ、ガミガミ」と口に出す。

「文句を言うとケンカになってしまう。イライラしているということをうまく伝えればいい、ということに最近気づきました」

 結婚して2、3年はケンカばかりだった。壁にアイロンを投げつけ穴が開いたこともある。そこで編み出したのが「ガミガミ」作戦。実は夫も、妻にイラッとした時は「もう、プンスカだよ」と言ってくるのだという。

「感情を持つこと自体は人間くさくていいことだと思うし、小出しにしたほうが爆発しない。それが攻撃的な出し方にならないよう、開発した方法。いわばLINEの『スタンプ』。ほかにもいらだつことがあった時は『残念、残念』とつぶやいて心を静めるようにしています」

 トヨマユ騒動を見て、この女性が一つだけ共感した点がある。

「内容はともかく、怒りを歌で表現していたことです。私も感情が高ぶってどうしようもない時は、歌うようにしています」

(編集部・取材班)

AERA 2017年9月11日号