「正直、困っています。感情があふれすぎて瞬間湯沸かし器になってるんです」

 職場での怒りにはまだ「落としどころ」がある。だが、家族相手だと怒りのゴールを見失い、感情の暴走は止まらない。

 30代の会社員女性は妊娠中、泣き叫んで夫に料理の皿をぶん投げた。久しぶりの友人と飲みに行った夫がなかなか帰ってこず、思い余って電話をするとカラオケ店で盛り上がっている最中。こんなに大変なのに、1次会ならともかく2次会まで行くなんて……。

●気持ちはマイペンライ

 勤務する会社で上司から新規のプロジェクトを任されたがうまくいかず、上司から連日進捗について詰められ、思い余って泣いてしまったことがある。夫に対しては、自分がその上司のように接しているとも思う。

「私のしてほしいことをわかってほしい、もっとこうしてほしいと長文のメールで夫を追い詰めてしまったことも。私は、身内にしか怒りがいかないんです」

 中部地方在住の50代男性は20年前、実家の親にキレた。

「こちらも忙しいのに、自分の隣人が亡くなったから今すぐ来いと電話で言われてカッときて、まだ小さかった子どもを車に乗せて小一時間かかる道をすっとばし、15分で帰ったんです」

 子どもも危険にさらすような行為に自己嫌悪になり、それからはキレなくなった。

「理想が高すぎると怒りがわいてくる。『マイペンライ(タイ語で“なんとかなる”の意)』がモットーになりました」(男性)

 都内在住の30代会社員男性は、妻の母親に感情決壊を起こした。結婚のあいさつで妻の地元に向かったが、直前で義母が予定をキャンセル。結局、家族に説得されて義母は待ち合わせ場所にやってきたが、男性はつい、声を荒らげてしまった。

「お母さん、それは卑怯です、不誠実です」

 義母は怒って帰り、妻は泣き出す修羅場に。ただ、意外にもその後、義母との関係はよくなったという。

「本音をさらして話せたことがよかったようです。怒りは、熱意の裏返しだと思う。自分が強く相手のことを感じているからこそ怒るわけだし、その気持ちが伝わったことはよかった」

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