夫は「俺ほど家事をやっているやつは周りにいない」と自負するが、担当は土日の洗濯物干しと気が向いたときの風呂掃除ぐらい。

 ボイコット宣言後、家事は夫と子どもたちの分担に。でも女性は煮物が食べたい欲望に耐えられず、わずか10日間で冷戦終結。その間、悶々と考えて気づいたのは、自分の中に義母へのコンプレックスがあることだった。専業主婦で子どもの世話が生きがいのような義母は、毎日主菜だけで3~4品を用意する。

「私は専業主婦とは違う。私はもっと尊重されていいはずなのに……」

 いま、子育てをする30、40代は「共働き第一世代」だ。親世代は夫が働き、妻は専業主婦のケースが多い。その後の世代も、妻が働いていてもパートなど補助的な立場がほとんど。共働き第一世代は、夫婦で収入格差がある場合もあるが、働く意欲や社会的ポジションに差はなくなりつつある。収入も同等のケースが増えてきた。だが、第一世代ゆえ、夫婦がどんなスタイルを取るのかに迷い、時に親や周囲と比べて、不安や不満を持つ。

「ロールモデルがないことに悩んでいるのは、女性だけではありません。男性も家事の平等な負担と同時に、仕事への高い貢献も依然期待されている。両立が困難な状況で板挟みになり戸惑っているのは、男性も同じなのではないでしょうか。意識の矛盾に、男性も迷っていると考えられます」

 国立社会保障・人口問題研究所の人口構造研究部室長、山内昌和さんはそう指摘する。2013年の「第5回全国家庭動向調査」では、「夫も家事や育児を平等に分担すべきだ」という項目が、1993年の第1回調査の73.9%から80.5%に上がった。一方で「夫は、会社の仕事と家庭の用事が重なった時は、会社の仕事を優先すべきだ」は、20年間ほぼ横ばいで67%のままなのだ。

AERA  2015年10月19日号より抜粋