上海に来た当初は、居場所が見つからずひきこもりのような生活が続いた。時間を持て余し、ピカチュウのコスプレ姿で仮想恋人・薇薇を抱っこして同人イベントに出かけていく様子をビリビリ動画にアップした。2人がポツンと地下鉄に乗る姿は意外にもイノセントでキュンとしてしまう。これは、自分という存在を問い直さずにはいられなかった山下さんと薇薇が、上海で居場所を見つけていく純愛と勇気の物語なのだ。

 動画はすぐに、中国の日本ファンの心をつかんだ。面白いものを見つけた時に使うネット民独特の賞賛コメント「おまわりさんこの人です」などの書き込みが相次ぎ、再生回数23万回という大変なことに。

 これが13年6月のこと。前年には日本政府が尖閣諸島の国有化を発表し、日中関係が急激に悪化していたが、政治とは無関係に山下智博現象は起きた。14年の冬からは、ネットのバラエティー番組「紳士の大体一分間」が始まり、毎日アップ中。13のプラットフォームで配信しているが、再生回数のほとんどはビリビリ動画だ。

AERA  2015年10月5日号より抜粋