「せっかく履修しているからには、もう少し村のことを知りたい」と考えた梅原さん。大学がオンライン授業に移行していたことも手伝い、村に家を借りて、週の半分以上を過ごすようになった。

 起業の決意が固まったのは4年のとき。村内にある空き家を調査するプロジェクトに関わり、「空き家を生まない仕組みを作り、全国展開できればビジネスとしても成り立つのではないか」と考えるようになった。また、村の人たちと関わるうち、「恩返しせずには帰れないという気持ちも大きかった」という。

 現在は村からの受託業務という形で、村内にある空き家の持ち主や、活用の意向について調査を続けている。「3年以内には今思っている計画を一通り形にし、他の市区町村に進出できたらと思っています」と話す。

 地方自治体から任命を受けて地域の振興に取り組む「地域おこし協力隊」の制度を使って村に移住する若者も多い。

 鈴木梨奈さん(22)は今春、大正大学を卒業し、協力隊員として村に着任した。

 新潟県長岡市出身。育った場所は過疎化が進み、小学校の同級生は、全校あわせて30人ほどだった。丹波山村の存在は、地域おこし協力隊の求人を通じて初めて知ったという。

「面接で初めて村に訪れたとき、一面を山に囲まれた風景に圧倒されて『ここで暮らしてみたい』と思いました。東京から意外とアクセスがいいのも決め手になりました」

■人口は減っても若者比率は増加

 現在は村の観光推進機構に所属し、飲食店でテイクアウト商品の開発・販売に携わる。大学時代、コーヒー同好会に所属していたことから、コーヒーを使った地域おこし活動にも関心があると話す。

 村が協力隊の募集を始めたのは2014年。初年度の採用者は4人だったが、受け入れを始めると村内の事業者から「うちにも来てほしい」と声が相次ぎ、22年は18人に増えた。現在までの採用総数は延べ35人。同村の矢嶋澄香主事はこう話す。

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