※イラストはイメージです
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 長寿化が進むにつれ老後資金への不安は募るばかり。先が長すぎるので「中間地点」を設けて、そこでの必要額を探ると、今度は新たに「介護」の準備が必要であることがわかった。介護費用を含めると、いったい80歳でいくらあればいいのか。さまざまな見方を紹介しよう。

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 首都圏に住むA子さん(67)が言う。

「80歳ですか? あまり考えたことないですね」

 夫は勤め先を退職し、すでに年金生活に入っている。A子さんは少しでも年金を増やしたいと、パートをしながら「年金繰り下げ」に挑戦中だ。

 年金収入で生活費を賄いたいのが繰り下げの動機というから、お金の計算は綿密に行うタイプだ。それでも、コロナ前は毎年行っていた海外旅行や孫への援助は貯蓄の取り崩しで対応している。

「『65歳でいくら』には関心がありましたが、80歳だと旅行やおいしいものを食べに行ったりもできなくなる年齢ですからねえ。1千万円ぐらいかとも思いますが、将来のことはわかりません」

 率直で正直な意見だろう。「老後資金」というと、現役の間にいくらためられるか、その一点に焦点が絞られる。しかし、ファイナンシャルプランナー(FP)の畠中雅子さんによると、60歳代の貯金がピークのときに判断ミスをする人が後を絶たないという。

「例えば、会社を退職してしばらくすると1千万円ぐらいかけて家をリフォームする人がいたりします。300万円ぐらいに抑えておけばいいのに、気が大きくなるのか使ってしまうんです。そして後になって、老後資金が足りないことに気づく」

 逆に、しっかり準備してきた人の中には、「不安だらけで使っていいお金がわからない」と戸惑っている人がいたりする。

 人生100年、現役を終えてからの先は長い。だとすると「中間地点」を設定し、そこで「いくらあればいいのか」を知っておく必要があるのではないか。そこで考えたのが、今回のテーマだ。

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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