東大・安田講堂(左)と京大の時計台
東大・安田講堂(左)と京大の時計台

 東大88人、京大95人。今年の推薦入試の合格者数だ。狭き門をくぐった高校生たちは、やる気や個性を育む高校の教育方針に刺激を受け、手厚いサポートに支えられたに違いない。高い合格実績を出している各校の取り組みを紹介する。

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 長崎県立の中高一貫校、佐世保北からは今年、東大の学校推薦型選抜で合格者が2人出た。

 同校は作家の村上龍さんや白石一郎さんをはじめ、政財界などにも幅広くOB・OGが輩出している。東大へは過去に一般入試で合格者を出した実績はあったものの、推薦での合格は初めてだ。

「東大に推薦で出すというのも初めてで、正直、対策などが確立されているわけでもなく、担任や部活動の顧問などはバタバタでした」

 進路指導主事の西平祐治さんはそう話す。

 合格した2人の学部は教養学部と工学部。教養学部に受かった生徒は英会話部に所属し、英語のディベート大会やスピーチコンテストに積極的に参加していたという。

 工学部に進む生徒は、日本情報オリンピックに出場してブロックの奨励賞を受賞。受験に際しても意思が明確だった。

「大学の数学も好きで勉強しているような、非常に興味・関心が高い生徒です。英語力も高かったのですが、将来プログラミングをやりたいという目標に、アピールできる実績も明確でしたので推薦に挑戦してみたいということでした」(西平さん)

「躍進」の背景には本人のやる気や努力に加え、同校ならではの取り組みもあるようだ。中高一貫の佐世保北では、中学3年時の授業から、週1時間ほどの“考える時間”を設けている。

「教材を与えて、じっくり考えて話し合ってもらい、その考えを皆の前で発表してもらいます。授業を急ぎたいときもありますが、そうした時間がないと、問題に対する思考力を養えません。今回の合格も、そうやって培った思考力がつながっていればうれしい」

 全国で最多、3人の合格者を出した(判明率90.9%時点)のは渋谷教育学園渋谷(東京)。東大が推薦入試を導入した2016年度から7年連続で合格者を出している私立の名門だ。卒業生には将棋の元女流棋士でフジテレビの竹俣紅アナウンサーらがいる。

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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