怖いのは、犬やにとって熱中症は致命的な病気で、重度では24時間以内に30%が死亡するというデータもあるという。

「『朝起きたらグッタリしていた』『帰宅したら意識がなかった』というケースが意外と多い。おかしいと思ったらまずはかかりつけの動物病院に電話をして、応急処置を」(井上さん)

 応急処置は下のとおり。動物病院でもウォーターバスや扇風機などで体を冷やす処置がとられるほか、点滴や酸素吸入などは、入院して行われる。熱中症は夜でも起こり、曜日を選ばない。かかりつけの動物病院が休診しているときのために、複数の病院の連絡先をメモしておきたい。

【熱中症かも…と思ったら(応急処置)】(井上さんの資料から)
・まずは病院に連絡する
・涼しいところで休ませる
・水を飲ませる(意識がある場合)
・体を冷やす(22~28度の水をかける、保冷剤などをタオルで巻いて首やわき、太ももの付け根にあてる、風を送る)
→こうした応急処置をとった上で動物病院を受診する

 最後に予防を。先の日本気象協会の調査によると、かかった場所で最も多かったのは「日中、散歩しているとき」で44.3%。次が「室内で過ごしているとき」で29.1%だった。

 散歩のポイントについてはこうだ。

「早朝か、地表から熱が放散された夜の遅い時間にしましょう。必ず水を持っていって、途中で飲ませたり、体にかけたりします。嫌がらなければ、水で濡らすと冷たくなるウェアやスカーフを利用してもいいかもしれません」(弓削田さん)

 室内で飼っている人は、エアコンは常時28度ぐらいに設定し、飼い主が留守中もつけっぱなしにする。子犬や興奮しやすい性格の場合は、もう少し低めのほうがいいそうだ。必ず水は補給しておいて、いつでも飲めるようにしておくこと。飼い主が外出している間、犬をケージに入れるときは、直射日光などが当たる場所に置かないよう注意しよう。体が冷やせるよう熱を吸収するアルミプレートのマットなど敷いておくのも手だ。

「サモエドやポメラニアンなどの長毛種は、夏の間、毛を短く刈っておく“サマーカット”も有用です。それ以外でも、こまめにブラッシングをし、余計な毛を取り除いてあげましょう」(同)

(本誌・山内リカ)

週刊朝日  2021年8月6日号