犬とでは「犬のほうがリスクは高い」と弓削田さん。

「猫はもともと砂漠にいた動物なので暑さに強い。また、室内でも屋外でも自由に動き回れるので、暑いときは涼しい場所に移動することができます。ケージに入っていたり、リードにつながれていたりする犬のほうが、熱中症になりやすいといえるでしょう」

 犬種によってもリスクは違うと、井上さん。

「鼻が潰れたパグやフレンチブルドッグは『短頭種』といい、気道が狭く、呼吸による体温調節が苦手です。秋田犬やシベリアンハスキー、アラスカンマラミュートなど、北方にいた犬種も、断熱用の毛が生えているぶん夏に体調を崩しやすい」

 年齢や性格、持病も熱中症のリスクを左右する。

 子犬は体温調整が未熟なうえ、あちこち動き回って自ら体温を上げやすい。成犬でも興奮しやすい性格だと吠えたり動き回ったりして体温を上げるため、熱中症になりやすい。

 このほか、高齢や肥満は熱中症のリスクになり、糖尿病や腎臓病、呼吸器疾患、心臓病などの持病があると、かかったときに重症化しやすい。これは人と同じだ。高齢犬では、認知機能が低下して体温を下げる行動がとりにくく、熱中症と同じような状態になることがあるので要注意だ。

「先ほど猫は熱中症になりにくいとお伝えしましたが、高齢の猫は加齢で行動範囲が狭まるなど事情が違ってきます。夏の暑さには注意が必要です」(弓削田さん)

 では、熱中症ではどんな症状が表れるのか。井上さんが解説する。

「大きく軽度、中等度、重度に分類されます(下の一覧参照)。初期は過度のパンティングやよだれ、落ち着きがなくなる、目の充血といった症状が表れ、その後、嘔吐や下痢、呼吸困難などが出てきて、最終的には意識がなくなり、けいれん発作を起こします」

【ペット(主に犬)の熱中症の重症度と症状】
軽度:口を開けて大きくハァハァする、よだれを垂らす、落ち着きがなくなる、目や口の粘膜が赤くなる、熱が出る(40度以上)
中等度:筋肉が震える、嘔吐や下痢(吐血・血便)、呼吸困難
重度:動かなくなる、意識がなくなる、けいれん発作を起こす

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