上野千鶴子氏 (c)朝日新聞社
上野千鶴子氏 (c)朝日新聞社

 本当に開催できるのか……不安が拭えない中、東京五輪が近づいてきた。3月25日には澤穂希さんら「なでしこジャパン」メンバーを第1走者に聖火リレーが始まる。が、ここに来てまたも五輪精神に反する不祥事が発覚。このままでは日本の“恥部”を世界にさらす大会になりかねない。

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 3月21日で首都圏1都3県の緊急事態宣言を解除した菅義偉首相。「第4波」の気配が迫る中での決断は、25日から始まる聖火リレーを意識したためとも指摘される。ある政府関係者がこう語る。

「4月の訪米に備えワクチンを打った菅首相は、バイデン大統領と直談判して五輪開催のお墨付きをもらうことで頭がいっぱいです。五輪を開催して大会期間中に感染者が一定程度、拡大することは想定内ということでしょう。多少、クラスターが発生しようと、大会を開きさえすれば、その高揚感で国民の支持を得られると計算している。人類はコロナ禍でも大会を成し遂げたと宣伝できますから」

 支持率回復のための五輪だとすれば、「平和の祭典」「復興五輪」などの言葉がむなしく響く。実際、そうした疑念を抱かれかねないほど、関係者のモラルが問われる不祥事が相次いでいる。

 3月17日には、東京五輪・パラリンピックの開閉会式の演出責任者を務めるクリエーティブディレクターの佐々木宏氏が、演出チーム内のLINEでタレントの渡辺直美さんに豚の扮装をさせるなど、侮辱するような提案をしていたことが文春オンラインの報道で発覚。佐々木氏は辞任した。佐々木氏は広告大手の電通出身。東大名誉教授で社会学者の上野千鶴子氏は呆れた様子でこう語る。

「小学生のいじめ並みの幼稚で粗野な容姿いじりですね。2017年には壇蜜さんを起用した宮城県の観光PR動画が性的な表現で炎上するなど、広告業界は男社会による旧態依然とした女性蔑視の価値観を許してきた。こうしたことが起きる素地は元からあったと言えます」

 佐々木氏は数々の有名CMを手がけたヒットメーカー。博報堂出身の作家・本間龍氏が語る。

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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