「1業種1社だとスポンサー企業が増えないから、集められるカネに限界がある。だから、スポンサー数は制限なしとした。主導したのは電通です。電通はスポンサー企業と組織委の間でマージンを抜いていますから。その結果、組織委は公表しているだけでも3千億円以上のスポンサー料をかき集めました」(本間氏)

 巨額の資金を集めてしまった以上、後戻りはできない。また、大会経費はすでに約1兆6千億円にまで膨張。五輪による景気浮揚を見越してこれだけのお金を突っ込んでしまった東京都と政府も、もはや「中止」とは言えないというわけだ。

 だが、目先の利益を追いかけて、より多くを失うことにならないのか。前出の上野氏はこう語る。

「私は当初から開催に反対です。『高度経済成長時代の輝きをもう一度』と、五輪熱で景気浮揚を狙うなんて、発想が古すぎます。開催が至上命題とされているようですが、コロナ対策が不十分なまま東京五輪で変異株への感染が拡大したら、日本は国際政治レベルで窮地に立たされますよ」

 本間氏もこう指摘する。

「外国人観光客を入れないことになり、五輪関連のインバウンド需要も見込めない。海外から選手や関係者が1万人以上やってきて、テロ対策や感染対策など、準備の費用もかさむ。五輪を開催したほうが日本は損をするのではないか」

“古い体質の男たち”がのさばる現状を変えないと、世界に恥をさらす結果になりかねない。(本誌・永井貴子、上田耕司)

週刊朝日  2021年4月2日号

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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