「業界では“天皇”と呼ばれるくらい有名。クリエーターというより、部下や外部から上がってきたアイデアの中から良いものをピックアップし進めていくのが得意だった。しかし、今回の一件で、考え方が古く、世界的なジェンダー平等の潮流に取り残されていたことが露呈してしまいました」

 佐々木氏の出身母体である電通は、五輪組織委にも多くの人材を送り込み、五輪に大きな影響力を及ぼしてきた。

「組織委は東京都、政府、地方自治体やスポンサーなどからの出向者の寄せ集め。大半の人は五輪のような巨大イベントのノウハウなどないので、電通に頼らざるを得ない。こうしたことから、電通出身の佐々木氏が起用されたのでしょう」(本間氏)

 森喜朗・五輪組織委前会長の女性蔑視発言で注目されたジェンダー意識の低さも再び問われている。佐々木氏が主導権を奪って以降の演出チームはスタッフが男性ばかりだと指摘されたのだ。佐々木氏も報道後に公表した謝罪文で<スタッフに男性が多いというご指摘はその通り>と認めた。

 森氏の辞任後、五輪組織委の新会長には女性の橋本聖子氏が就任。女性理事を12人増員させるなど組織委も「汚名返上」を試みているが、染みついた体質は相当根深い。前出の上野氏が語る。

「橋本氏の会長起用は『困った時の女頼み』で五輪の強行開催か中止かの困難な舵取りを押し付けられただけ。女性理事を増やしたといっても、ほとんどの事柄が決定済みの最終段階からの参加に意味があるのか。上層部にいる古い体質の男性たちの頭はまったく切り替わっていません」

 不祥事のたび国民の気持ちは五輪から離れていく。それでも日本が五輪開催に固執する背景には、巨大商業イベントと化した五輪の利権がある。五輪は1984年のロサンゼルス大会から1業種1社のスポンサー制度を取り入れていたが、東京五輪ではその原則を取り払った。これにより、スポンサー数は2012年のロンドン五輪、16年のリオ五輪と比べても膨れ上がり、68社もの国内スポンサーをつけた。

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