他方で、早稲田・国際教養は今や看板学部の一つだ。英語で授業をするほか、1年間の留学が必須になっている。幅広い知識と教養を身に付けるリベラルアーツ教育も人気だ。「早稲田の大学改革の象徴」(予備校幹部)とも言われており、早慶の取り組みの差が人気にも出ていると見られる。

 ただ、東進ハイスクールを運営するナガセの市村秀二広報部長は言う。

「慶應ブランドはいまだに健在だ」

 サンプルは少ないが、慶應義塾・法と早稲田・政治経済の看板学部対決では全員が慶應を選んだ。慶應義塾・法と早稲田全学部との対決でも98%が慶應だ。

 これに加えて、慶應には看板学部の医学部がある。今年は、東京・理科一類と慶應義塾・医では、43%が慶應を選んだ。

「権威づけに東大に合格して慶應・医にいくという受験生がいる。早稲田ではこうした受験生はいない」(市村広報部長)

 また、早稲田は今年度の入試改革が裏目に出るかもしれない。政治経済は来年2月の入試から新テスト(大学入学共通テスト)の結果を活用することを決め、数学を必須化。国際教養でも新テストを導入する予定だ。市村広報部長は言う。

「コロナ禍で受験勉強にも不安がある中、入試を変えてほしくないという考えが根強くある。人気を大きく下げる可能性もある」

(本誌・吉崎洋夫、松岡瑛理)

週刊朝日  2020年10月9日号より抜粋

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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