横須賀市救急医療センターに置かれた検査ブース。ウイルスへの防御性に優れ、防護服なしで検体を採取できる(C)朝日新聞社 
横須賀市救急医療センターに置かれた検査ブース。ウイルスへの防御性に優れ、防護服なしで検体を採取できる(C)朝日新聞社 

 本誌が4月13日に配信した記事「患者に隠されるPCR検査『3条件』とは?現役医師が告白『コロナ野放し』の実態」により、新型コロナウイルスの感染の有無を調べるPCR検査の対象に厳しい「絞り込み」がかけられている実態が明らかになり、波紋を広げている。Twitter上では、「こんなに悪化させてからでないとPCR検査受けられないなんて」「これじゃ、いつになっても感染者減らないな」などと、驚きの声が続出した。患者に知らされないこうした条件は、なぜつくられたのだろうか。

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 文書は<かかりつけ医の外来診断手順(初診例)>というタイトルで、3月26日付。感染の疑いがある患者が新型コロナ外来でPCR検査を受けるまでフローチャートで示されている。チャートには<発熱37.5度以上>や<倦怠感>といった厚生労働省のホームページなどでも示されている条件の他に、<呼吸苦、頻呼吸><聴診にてラ音捻髪音>といった肺炎の疑いを示す兆候があった場合、血液検査や胸部X線検査が行われることなども示されている。

 こうした手続きの末、症状が4日以上改善しない場合などに新型コロナ外来でPCR検査を受けることになるのだが、最後の部分に条件として<37.5度↑>/<SPO2<93%>/<肺炎像+>という記載がある。つまり、37.5度以上の発熱があり、かつ胸部X線検査で肺炎の像が認められる患者で、SpO2が93%以下の者がPCR検査を受けられることになる。

 SpO2とは動脈血酸素飽和度のことで、医師によれば98%くらいが正常値。これが93%ということは何を意味するのか。「ゼーゼーハーハーいって死にそうなくらい苦しい状態」(本誌に資料を提供した内科医)だという。

 この内科医は、この基準では「手遅れ」になる患者が出ることを危惧しつつ、「これほど厳しい条件を医療従事者に示しながら一般市民にはアナウンスしていない。これでは“ダブルスタンダード”です」と憤った。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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保健所職員「38度が2週間以上続けば検査する」