「多剤服用」でうつや認知症の副作用も…それでも減薬が難しいワケ (4/5) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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「多剤服用」でうつや認知症の副作用も…それでも減薬が難しいワケ

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鈴木裕也週刊朝日
適正に服用すれば効く薬でも、飲みすぎると危険な場合がある (※写真はイメージ) (c)朝日新聞社

適正に服用すれば効く薬でも、飲みすぎると危険な場合がある (※写真はイメージ) (c)朝日新聞社

同一の薬局で1ヶ月に調剤された薬剤種類数 (週刊朝日2020年1月24号より)

同一の薬局で1ヶ月に調剤された薬剤種類数 (週刊朝日2020年1月24号より)

高齢者で特に慎重な投与を要する薬物 (週刊朝日2020年1月24号より)

高齢者で特に慎重な投与を要する薬物 (週刊朝日2020年1月24号より)

■適正な減薬で認知症状が改善

 17年11月に入居した際に9種類の内服をしていた91歳の女性は、入居当日から大声を上げ、夜間は眠らずに廊下を這(は)いずり回り、ほかの入居者の部屋に侵入し奇声を発した。物をたたき、入居者へ暴言を吐くなどの症状により、退去を勧告しなければならない状態だった。家族と相談して精神科に入院してもらい、症状が落ち着いた2カ月後に再入居。そのとき薬は12種類に増えていた。だが、暴言・暴力こそなくなったが、夜間の這い出し、奇声は変わらない。内服薬の適正化を試みたのは18年4月。抗不安薬を変更し、長年飲み続けていた胃薬や痛み止めを中止し、まず7種類まで減薬し、症状を見ながらさらに睡眠薬と数種類服用していた下剤も1種類だけに減らした。すると、夜間の這い出しや奇声がなくなり始め、2週間たつと日中も車椅子で落ち着いて過ごせるようになり、1カ月後には入居者や介護職員との会話に笑ったり、つじつまは合わないとはいえ会話も可能になった。また、車椅子を自力で動かせるようになる。2カ月後には他者を気遣う言葉も出るようになり、今では車椅子で自由に移動して過ごせるようになった。そんな女性を見て家族は「病院も精神科もダメで、薬の増量もできない状態で、このまま一緒に死のうかとまで考えたことがあったが、減薬してもらって本当によかった」と話している。

 このほか、減薬を試みた認知症入居者の約3割で何らかの改善が見られたという。

 同社の「認知症高齢者減薬取り組みプロジェクトチーム」を率いる小林司取締役は、この取り組みは同社だけでなく業界全体にメリットがあると言う。

「薬の適正使用については、本来であれば適正に投与されれば効くはずの薬が、飲み合わせが悪い、重複投与、過量投与などで、果たすべき役割を発揮できない。服用薬の数が増えれば、ご本人は飲むのが大変だし、ご家族は薬代の負担となります。しかし、薬剤数を減らして費用を減らせばよいというわけではありません。われわれは介護施設運営者ですから、入居者の生活の質(QOL)、日常生活動作(ADL)の改善が何より大切だと考えるからです。減薬によって入居者の認知症の進行が改善すれば、現場の負荷も軽減するというメリットもある。ご入居者、ご家族、現場がハッピーになります。今後もこのプロジェクトを続けるとともに、介護業界全体の発展につながればいいと思い、減薬のデータや報告内容を開示していくつもりです」


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