皆さんにも、太極拳の中で特に姿勢を良くするのに効果がある二つの動きを紹介しましょう。

 一つ目は太極拳の準備運動として行われるすわい手です。私の太極拳の師、楊名時先生によると、「すわい」とはポイと投げるという意味なのだそうです。

(1)まず両足を肩幅ぐらいに開いて立ち、ひざを少し曲げます。

(2)背骨をまっすぐにして、背骨を軸にして体を回転させます。足は動かないようにします。

(3)腕は力を抜いて、体の回転にあわせて、左右に大きくふります。

 簡単な運動なのですが、この動きは肩や背中の凝りをほぐして姿勢を正すうえに、脊髄にもいい効果があるといいます。

 二つ目は鵜沼さんが推奨する金鶏(きんけい)気功です。これは太極拳の片足立ちから生まれたものです。

(1)腕を自然に垂らしてかかとをつけて立ち、腕を横に上げ頭の上で合掌します。

(2)合掌を喉の高さまで下ろし、肘をのばして両腕を前に出します。

(3)息を吐きながら右手を下に、左手を上に動かし、同時に左膝を骨盤の高さまで持ち上げます。

(4)息を吸いながら、肘をのばした合掌のポーズに戻ります。

(5)(3)と同じ動きを左右逆に行います。左右各1回をワンセットとして10セット行います。

 すわい手、金鶏気功いずれも簡単な動きです。でもとても効果があります。是非、試してみてください。

週刊朝日  2019年11月22日号

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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