自治医科大学病院 整形外科教授・竹下克志医師(左)、東京医科大学病院 整形外科准教授・遠藤健司医師
自治医科大学病院 整形外科教授・竹下克志医師(左)、東京医科大学病院 整形外科准教授・遠藤健司医師
むち打ち症が起こるイメージ (イラスト/今崎和広) (週刊朝日2019年10月11日号より)
むち打ち症が起こるイメージ (イラスト/今崎和広) (週刊朝日2019年10月11日号より)
交通事故軽傷者の部位別の内訳/むち打ち症 データ (週刊朝日2019年10月11日号より)
交通事故軽傷者の部位別の内訳/むち打ち症 データ (週刊朝日2019年10月11日号より)

 交通事故などの衝撃で首がムチのようにしなることで起こる、むち打ち症。現在は「外傷性頸部症候群」と呼ぶようになった。「平成30年中の交通事故の発生状況」損傷主部位別死傷者数(警察庁交通局)のうち「頸部」の人数は約29万人。交通事故以外が原因で、むち打ち症になる人もいる。受傷後できるだけ早く適切な治療を受けることが、症状を早く回復させる重要なポイントとなる。

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 交通事故で起こる代表的な傷病の一つ、むち打ち症。近年、エアバッグや自動ブレーキシステムなど、自動車に搭載された安全装備が格段に良くなったこともあり、交通事故による死者数、負傷者数はともに減少している。だが、こうした疾患で苦しむ人は今もなお少なくない。

「むち打ち症は、首をムチのようにしならせたり、ひねったりすることで損傷した状態をいいます。交通事故が多いですが、スポーツや転落などでも起こります。首には骨、椎間板、いくつかの筋肉があり、どういう状態で衝撃を受けたかや、損傷を負った組織や場所によって、症状や程度が変わってきます」

 そう話すのは、自治医科大学病院整形外科教授の竹下克志医師だ。

 首を痛めるメカニズムはまだよくわかっていないが、大人の頭の重さは、約4~5キログラム。その重さを常に支えているのが首だ。衝突などで主に上半身に衝撃が加わると、頭が大きく前後左右に振られる。それを支えきれないときに首の筋肉や関節に損傷が生じる。

 事実、警察庁の報告によると、交通事故によるケガの受傷部位で最も多いのが首で、その割合は6割程度にものぼる。

 この場合、少し特殊なのは単独事故を除けば、加害者と被害者の関係が生じたり、車などの器物損壊を伴ったりすることだ。こうした問題で、医療機関への受診が遅くなることもある。

「状況にもよりますが、緊張や興奮状態に陥っていると、損傷を負っていても症状を感じないことが多い。その日は大丈夫でも翌朝や1、2日後に痛みなどの症状が出てくることがあります。補償などの問題もあるので、念のため病院で診てもらうのが、今の一般的な考え方です」(竹下医師)

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