また、以前は、首に巻く固定器具、頸椎カラーを使った治療がさかんにおこなわれていた。だが、今は一時的な使用にとどめるという考え方が主流だ。こちらも最近の報告で、早期から頸椎をできる範囲で動かしたほうが、カラー固定をおこなうより治療成績がよいという報告があるからだ。

「むち打ち症は早い段階で適切な治療を受ければ、基本的にこじらせることはありません。損傷の程度にもよりますが、1カ月後ぐらいには以前のような生活ができるという感じでしょう」(遠藤医師)

 むち打ち症はまだ病態がはっきりしていないところが多い。そのため、痛みやしびれなどの症状がなかなか改善されず、難治化・慢性化するケースも知られている。それを予防するためにも、「早期に適切な治療を受けるだけでなく、セルフケアもとても重要」と遠藤医師は訴える。

 痛みの慢性化には「ストレス」と「不動化」が関係している。ストレスとはこころとからだにかかった負荷のこと。一方の不動化とは、長時間にわたって同じ姿勢を続けることを指す。当然ながら交通事故に遭えば、それ自体がストレスになるが、不動化は自身の取り組み次第で予防が可能だ。

 そして、この不動化に陥らないためにおこないたいのが、セルフケアだという。

「まず日々の姿勢に気を付けましょう。特にスマホやパソコンを使う際は、背中を丸めて首を前に突き出すような姿勢を続けがち。少なくとも30分に1回はスマホやパソコンから目を離し、軽くからだを動かすなど休憩をとることが大事です」

 と遠藤医師。全身運動も勧められる。ウォーキングや軽いストレッチなどは、電気やけん引による物理療法より効果が高いというエビデンスも出ている。(本誌・山内リカ)

週刊朝日  2019年10月11日号