医療機関では、医師による問診や触診、X線による画像検査がおこなわれる。胸や頭を打っている場合は胸部や頭部MRI検査が追加されることもある。

 問診では、痛みの程度や場所、痛み以外の症状(しびれやまひ、めまい、吐き気など)のほか、衝撃を受けたときの状態や車の座席の位置、シートベルト着用の有無などについても細かく質問される。触診では、首を可能な範囲で動かして可動域を調べたり、圧痛点(押すと痛い場所)を確かめたりする。

「むち打ち症の特徴は、“画像では損傷が確認できないにもかかわらず、多様な症状があること”。逆に脱臼や骨折といった問題が見つかれば、そちらの診断になります」(同)

『むち打ち損傷ハンドブック』によると、損傷を負った場所や症状によって、6タイプに分類されている。

(1)頸椎ねんざ型:首痛や張り、肩こりなど
(2)神経根型:首と腕、肩甲骨の痛みとしびれ。しびれは首を動かすと強まり、手や指の感覚が鈍くなる
(3)脊髄症型:神経根型に加え、足にもしびれ
(4)バレー・リュー型:首痛、頭痛、めまい、吐き気、不安感、不眠など
(5)胸郭出口症候群型:首痛、片方の腕にしびれと冷感
(6)脳脊髄液減少症型:首痛、頭痛(横になると楽になる)、微熱、めまい、吐き気、集中力低下、記憶障害など

 同書の著者の一人、東京医科大学病院整形外科准教授の遠藤健司医師は言う。

「治療の柱は、非ステロイド系消炎鎮痛薬の服用や湿布の塗布、筋弛緩薬の服用などです。高齢者の場合は胃腸の副作用が出やすい非ステロイド系消炎鎮痛薬の代わりに、アセトアミノフェンという鎮痛薬が処方されることもあります」

 こうした薬物治療に加え、頸椎ねんざ型は安静にして様子を見る、胸郭出口症候群型は生活指導と運動療法をおこなうなど、タイプ別の治療が加わるという。

 ちなみに、ここでいう安静とは、「ずっと寝ている」という意味ではなく、痛みが強まらない範囲でからだを動かすこと。実は、からだを適度に動かすことで症状が回復するスピードが速まることが、最近の研究でわかってきた。

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