複数区では、北海道の自民高橋はるみ氏は前知事で知名度が抜群。同じ自民の岩本剛人氏の票を食って、一本かぶりする可能性も指摘される。東京では、元厚労副大臣の武見敬三氏が当落線上になるとの予測もある。

 公明は選挙区7、比例7の当選を目指しているが、兵庫で取りこぼす危険性があり、山口那津男代表や公明とのパイプが太い菅義偉官房長官が現地入りしてテコ入れしている。

 維新の党勢の衰えも顕著だ。大阪では16年参院選で比例票が約130万票あったのが、17年衆院選で約93万票とガタ減りしている。大阪での2議席獲得に黄信号がともる。

 自民の獲得議席数は、野上氏が52議席、小林氏が56議席、角谷氏が55議席で、いずれも10議席以上減らす結果となった。維新を足しても、改憲勢力3分の2には届かなくなる。野党では、立憲がいずれも20議席超で躍進するが、国民、共産などは伸び悩む。

「2桁も減らして、3分の2維持どころか、自民単独過半数割れは惨敗です。普通の自民党総裁ならば辞任するでしょうが、安倍首相は『負けじゃない』と言い張り、総理の椅子に居座るでしょう」(角谷氏)

 ロシアとの北方領土返還交渉も北朝鮮との拉致問題解決も暗礁に乗り上げ、解決の糸口すら見えない。議長国を務めたG20もさしたる成果は見られなかった。そこへ、10月からの消費増税が重くのしかかる。

「10%というキリのいい数字は、簡単に税額を計算できるだけに、国民の心理的負担が大きい。一方で、年金だけでは老後に2千万円足りなくなるから投資しろ、では日々の生活に追われる庶民の反発を買って当然です。増税後、景気が冷え込むのを誘発することになるでしょう。ポスト安倍は尻拭い内閣で短命に終わる恐れが多分にある。岸田氏がやろうと、菅氏がやろうと、次の衆院選は勝機が乏しくなるからです」(野上氏)

“消えた年金問題”が第1次安倍政権瓦解の引き金となったように、年金問題や増税は選挙で思わぬ風を吹かすことがある。逆風がつむじ風となって、あちこちの選挙区で議席を巻き上げる事態も起こり得るのだ。

 そうなるとポスト安倍の声も現実味を帯びてくる。自民党で安倍首相が所属する清和会の議員は言う。

「安倍さんは4選を目指す気はない。安倍さんも飽きられている。ポスト安倍がもっと言われるようになっても仕方がない。うちの派閥は、菅さんか、岸田さんを推すことになる。ただ、清和会としては本音は菅さん。安倍さんと一心同体だし、正式な派閥もないのでやりやすい」

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