しかも6月10日は、参院決算委員会で「2千万円不足問題」が紛糾した日だ。この調査は、年金問題が反映されているとは言い難い。実際、6月末に実施された調査では、さらに惨憺(さんたん)たる結果になったとの情報が永田町を駆け巡る。安倍首相は勝敗ラインを、自公で改選議席の過半数となる63議席に設定した。自公の改選議席は77だから、ずいぶんとハードルを下げたものである。詰まるところ、安倍政権のレームダック化は隠しようもなく、自信を失っている証拠なのだ。

 本誌は「亥年選挙」の総決算となる参院選の獲得議席数を、前出の野上氏、政治評論家の小林吉弥氏、政治ジャーナリストの角谷浩一氏に予測してもらった。3氏とも最大の争点は「年金問題」で一致する。そこへさまざまなマイナス材料が加わってくる。

 参院選の勝敗を左右する1人区で、自民は16年参院選で21勝11敗と野党の善戦を許した。焦点となるのは東北6選挙区で、前回、自民は1議席しか獲得できなかった。農協改革や環太平洋経済連携協定(TPP)など、農政への不安から“農協の反乱”といわれた。

 今回も懸案事項は農業だ。日米貿易交渉でコメ、牛・豚肉など農産物重要5品目でも関税撤廃を迫られるのは必至で、日本の農業は大きな打撃を受けかねない状況だ。さらに、そこへ降って湧いたのが、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の適地調査ミス問題だ。

 野上氏は前回と同じく、東北で自民は1勝5敗の再現があり得ると見る。

「配備候補地の秋田は、前回、自民が東北で唯一、5万票の大差で議席を守った選挙区です。今回も当初、自民が安泰と見られていました。しかし、イージス・アショア問題浮上で自民最新情勢調査でも並んでしまいました。東北全般に言えることですが、農業票の流出も懸念される状況です」

 小林氏は4勝2敗で自民が勝ち越すと予想する。5野党・会派が32の1人区すべてで一本化できたのは6月に入ってからだった。小林氏がこう語る。

「野党が統一候補で合意するのが遅すぎました。新人ばかりなのだから、知名度を浸透させていかなければならないのに、その時間が足りません」

 ただし、「接戦ばかりで全県でひっくり返る余地は残っている」と波乱含みだ。

 角谷氏もこう語る。

「東北における野党の勢いは失速気味です。野党も楽な選挙ではない。候補が統一されただけでは勝てず、票を野党に集めるという努力を各党がやらなければ、勝利は見込めない。青森、宮城、秋田は自民が優勢で、3勝3敗と見ます」

 他の注目の1人区については後に触れるが、1人区の戦いで自民は、野上氏が19勝13敗、小林氏が23勝9敗、角谷氏は21勝11敗とした。

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