大塚篤司/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医
大塚篤司/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医
医学的に根拠が乏しい食事療法は健康被害が生まれる危険性があります(写真:getty images)
医学的に根拠が乏しい食事療法は健康被害が生まれる危険性があります(写真:getty images)

 医師が診療の際に患者からよく聞かれることの一つに「病気を治すために食事はどうしたらいいですか?」という質問があります。京都大学医学部特定准教授で皮膚科医の大塚篤司医師が、ニキビと食事の関係について語ります。

*  *  *

 私が勤務する病院の近くには、ニシンそばのおいしいおそば屋さんがあります。外来診療や研究の合間、私も気分転換をかねておそばを食べに行くことがあります。

 おそばはグリセミック指数(Glycemic Index:GI)が低い炭水化物です。GI値とは、炭水化物が消化され糖に変わるときのスピードを表す数値。もともとは糖尿病などの食事指導に使われていました。GI値が低いほうが太りにくい。そのため、糖質制限ダイエットの流行とともに、GI値が低いものを選んで食べるGI食が一般の方にも広まりつつあります。

 お気に入りのおそば屋さんは病院に近いため、多くの病院関係者や患者さんが利用します。テーブル間の距離も近く、周りの会話は自然と耳に入ってきます。

「食事に関しては何も言ってくれない」

「お医者さんはそういうところ弱いね」

 病院で診察を終えた後と思われるご年配夫婦の会話です。

 テレビやインターネットでは頻繁に「〇〇(病気の名前)に効く食事」といった内容の番組が取り上げられます。その影響からか、外来では食事に関しての質問を受けることが度々あります。

「病気を治すために食事はどうしたらいいですか?」

 その質問に多くの医師は、

「バランスよく食べてください」

 と答えます。

 食べ物と病気の関係は、食物アレルギーなど原因がわかっている疾患以外、残念ながら不明なことが多いです。正確に言うと、研究されているけれども決着がついていないものがほとんどです。

 先日も外来で20代の女性から質問を受けました。

「ニキビや吹き出物ができない食事を教えてください」

 さて、困った。

 吹き出物とニキビは基本的には同じ病気であり、毛穴の炎症です。ニキビは専門的には「尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)」といいます。ニキビの多くは、ニキビ菌(アクネ桿菌<かんきん>)と呼ばれる正常の皮膚に存在する菌による炎症です。顔や胸、背中に多発します。一方、吹き出物は毛包炎(もうほうえん)といい、通常は1個や2個しかできません。黄色ブドウ球菌(おうしょくぶどうきゅうきん)という細菌が原因になることが多い皮膚感染症です。

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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