貴乃花部屋から千賀ノ浦部屋に移った貴景勝(c)朝日新聞社
貴乃花部屋から千賀ノ浦部屋に移った貴景勝(c)朝日新聞社
大相撲を去っても注目される元貴乃花親方(c)朝日新聞社
大相撲を去っても注目される元貴乃花親方(c)朝日新聞社

 3人の横綱が休場し、終盤には大関・豪栄道も休場と、看板役者不在だった大相撲九州場所を盛り上げたのは小結・貴景勝。初日に横綱・稀勢の里を破って波に乗ると、13勝2敗で見事、初優勝を飾った。それも1横綱2大関を破ってだから内容がある。

【写真】大相撲を去っても注目される元貴乃花親方

「来場所は関脇。大躍進です。佐藤君(貴景勝の本名)は先場所も小結で9勝していて今場所も2桁勝利。次の初場所では大関獲りに挑戦、ってことになりそうですね」(相撲記者)

 兵庫・芦屋生まれの貴景勝。父親が貴乃花のファンで、貴乃花の相撲教室に参加したことが相撲との出会いだという。相撲クラブに所属していた中学生の当時、4歳年上で大学生だった宇良(故障から復帰し、現在は三段目)が勝てなかった、という逸話もある。

 高校は強豪の埼玉栄に相撲留学。

「あそこの相撲部の監督と貴乃花は仲が良いから、貴乃花が逸材を預けたようなもの。相撲との出会いも進学も貴乃花絡みで、部屋にも入った。貴景勝の相撲人生は貴乃花なしでは語れないわけです」

 こう語るベテラン記者によると、素は関西気質で、場所中でなければ年上の人間にでも突っ込みを入れるという貴景勝。

 しかし今場所は、気が付けば優勝争いをリードする展開。報道陣からの質問に“優勝”という言葉が何度も出てきたが、彼の返事は終始落ち着いていて、関西のノリは全く感じられなかった。

「チャラチャラしてたら貴乃花にひどく怒られていましたからね。ご存じのとおり貴乃花は角界を離れ、弟子たちは移籍しました。師弟関係は微妙になっていたという声もありましたが、そんなことはない。“土俵の鬼”と言われた初代・若乃花から続く教えは、彼らの中に生きています。特に貴景勝はマイペースだから、一連の騒動にも動じずに自分の相撲を取ってますよ」(同前)

 厳しい師弟関係で培った勝負強さが持ち味だ。

「一日一番。勝っておごらず負けて悔やまず。自分の相撲を取り切れば、極端な話、負けてもいい、と。変に勝ちにいこうとして、立ち合いで変化なんかしたらクビです。白鵬なんか平気でやっていますが(笑)」(同前)

(岸本貞司)

※週刊朝日2018年12月7日号より加筆