医師「耳あかは自然に外に排出されるため、基本的に耳かきは必要ありません」(※写真はイメージ)
医師「耳あかは自然に外に排出されるため、基本的に耳かきは必要ありません」(※写真はイメージ)

 耳は目のように閉じることができず、眠っている間も音は入るため、生まれてからずっと休まず働き続けている器官です。耳が何らかの理由で聞こえなくなるのが難聴ですが、強いストレスがその発症に影響しているといいます。週刊朝日ムック『「よく聞こえない」ときの耳の本』では、耳や聞こえに関する素朴な疑問に、岩手医科大学病院耳鼻咽喉科教授の佐藤宏昭医師に答えてもらいました。その一部をお届けします。

*  *  *

Q 飛行機やエレベーターなど気圧の変化は耳(聴力)に悪い?

A 耳抜きができないと中耳炎の恐れ

 飛行機の離発着時やスキューバダイビング、エレベーターに乗ったときに気圧の変化を受け、耳がツーンと痛んだり、聞こえが悪く感じたりすることがあります。多くの場合、つばを飲んだりあくびをしたりして「耳抜き」をすると解消されますが、この耳抜きがうまくできないと痛みが治まらなかったり、その後も聞こえが悪くなったりと、いわゆる航空性中耳炎になることがあります。風邪やアレルギー性鼻炎などで、耳管の機能が不良だと起こりやすくなります。

Q ストレスによっても耳が聞こえなくなる?

A 強いストレスが長く続くと難聴リスクに

 難聴の誘因として、加齢のほか、遺伝や環境など複数の要因が考えられますが、精神疲労や睡眠不足、肉体疲労などの精神的・肉体的ストレスが長く続くことにより自律神経が乱れ、耳鳴りや聞こえが悪くなることがあります。突発性難聴やメニエール病などはその発症前に強いストレスが関わっている例が多いとされています。とくに耳鳴りを慢性的に抱えている人の場合、回避可能なストレスはなるべく避けることが難聴発症の予防となります。

Q 耳鳴りは耳の異常のサイン?耳鳴りの原因で考えられることは?

A 非拍動性はストレス、拍動性は貧血から

 耳鳴りとは、外で音がしていないのに音が聞こえる状態です。内耳から脳に至る聴覚経路の聞こえに関わる神経が活性化し、本人にしか聞こえない非拍動性(鼓動と一致しない)の耳鳴りが大半です。多くは慢性持続性であり、悪化要因としてストレスがあげられます。一方、鼓動と一致する拍動性の耳鳴りは、貧血によるものが多く、その場合は貧血の治療で改善します。加齢性難聴や突発性難聴、音響外傷、メニエール病、薬剤性難聴でも耳鳴りが起こります。

次のページ
耳かき中に鼓膜を注いて…