意外と知られていないのが、在職中だけでなく退職後も支給の条件がそろっていれば受給可能だということ。このときに注意したいのが、退職日だ。

「退職日は絶対に働かないでください」と、黒田さんは忠告する。退職日に出勤扱いになると、就労不能とみなされず、退職後に受給できなくなってしまうのだ。

片付けや業務の引き継ぎなどは退職日の前に済ませておき、退職日はあいさつ程度にしておきましょう」

 会社員の場合、月々の健康保険料は給与から天引きされていることが多いだろう。この保険料の金額は一定ではない。4~6月の月収の平均額(標準報酬月額)で決まるのだ。この期間に集中して働きすぎると当然、保険料は上がることになる。

 また会社を辞めるときに覚えておきたいのが、「任意継続」という制度。退職すると、国民健康保険(国保)に加入するか家族の扶養に入るという選択肢があるが、任意継続ならば一律の保険料で会社の健康保険を2年間継続できる。その保険料は標準報酬月額で決まるが、上限額が28万円と決まっているため、それ以上の収入ならば一定額になる。

 一方、国保は都道府県が定める収入などの条件によって保険料が決まる。減免申請も可能だが、退職後1年目なら任意継続のほうが安い可能性が高い。退職時に必ず保険料を比較しよう。

●市販薬も節税の対象に
 1年間の医療費分を節税できる医療費控除は知っている人も多いだろう。控除の対象になるのは、1年間に10万円以上の医療費を使った場合だ。そんなに使っていないという人も、1年前に始まった「セルフメディケーション税制」なら使えるかもしれない。この制度は、市販の医薬品の購入費が年間1万2千円を超えたとき、その超えた分が所得から控除されるというもの。対象となるのは、病院で処方される薬から転用された「スイッチOTC薬」。風邪薬や胃腸薬、湿布薬など、現在対象となる医薬品は1680点。生計が一緒の家族ならば合算できる。

 この制度は医療費控除と併用できない。国税局のホームページで金額を入れると、どちらの減税額が高いか試算できる。対象商品を購入すると領収書に明記されるため、薬局の領収書は必ず保管しておこう。

 用意されたごちそうも、自分で皿とお箸を準備しなければ食べ損なう。“おまかせ”コースを卒業し、自ら料理を選べる患者になろう。(本誌・井艸恵美)

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