よく免疫と自然治癒が混同されますが、この二つは別の概念です。外敵から体を守る免疫の仕組みは自然治癒のひとつかもしれませんが、傷を治す仕組みとは別物です。

『人はなぜ治るのか』『癒す心、治る力』の著書がある統合医学の第一人者、アンドルー・ワイル博士は「人間の体には、消化器系、呼吸器系、神経系、血管系などと同様に治癒系がある」という考え方を提唱しています。この治癒システムが稼働して、自然治癒が起こるというのです。

 私は、「内なる生命場」の存在が自然治癒と関係していると考えています。前回(4月20日号)「気」について述べたときに説明しましたが、人体の臓器を個別に捉えるのではなく、その関係性、秩序性に注目するのが、生命場の考え方です。なんらかの理由で、生命場のエネルギーが下降したときに、自然治癒力がそれを回復させるのです。

 では、この自然治癒力はどこから生まれるのでしょうか。私はそれを人体の中だけで捉えてもダメだと思っています。内なる生命場はそれを包む環境(外界)の場に含まれています。体の中から生まれる力(自力)と環境から生まれる力(他力)が統合されて生じるのが、自然治癒力なのだと考えているのです。

週刊朝日 2018年4月27日号

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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