肝臓で合成されたコレステロールは、悪玉のLDL−Cとなり末梢血管に運ばれる。これが蓄積すると動脈硬化が進むが、この末梢のコレステロールを回収、肝臓に戻すのがHDLだ。

 なぜHDL−Cが高すぎるのは問題なのか。同大教授の岡村智教氏は言う。

「実は、機能が高いHDLは回収したコレステロールを活発に肝臓に運びますが、機能が低いHDLはコレステロールを回収しただけでため込むのです」

 前者はコレステロールがスムーズに代謝されるので動脈硬化を防ぐが、後者は代謝が滞る。さらに、HDLからLDLにコレステロールが送られるケースもあり、これが脳心血管系の死亡リスクを高めている可能性があるという。

 日本動脈硬化学会の診断基準では、LDL−C140以上、HDL−C40未満だと脂質異常症だ。今回の結果によって、「基準が大きく動くことはない」(岡村氏)というが──。

「今のところ、高HDL−Cでも、それが果たしてどちらの機能を持つHDLか日常診療ではわかりません。HDL−Cが80以上で、動脈硬化が進んでいると指摘されたり、脳卒中や心臓病で亡くなった家族がいたりする人は高リスク群と考え、かかりつけ医に相談してください」(岡村氏) (本誌・山内リカ)

週刊朝日 2018年4月6日号