ただし、葛根湯の服用には注意が必要だ。麻黄(まおう)というアドレナリンと同じ成分が入っているため、緑内障や前立腺肥大、甲状腺機能亢進症、心臓病を患っている人は、症状を悪化させてしまうおそれがあるからだ。

「こうした持病のある人は、桂枝加朮附湯を選んでください。麻黄は含まれておらず、上半身のこりを和らげる生薬、水分バランスを整える生薬、血流を改善する生薬などからできています」(今津さん)

 ここまで仕事中の不調に効く漢方薬をいくつか紹介してきたが、自分の不調を改善する薬は見つかっただろうか。

 今回挙げた漢方薬は主にセルフメディケーションを目的にしたもので、それぞれの症状に使われる処方はほかにもある。また、漢方薬にも副作用があり、葛根湯のように服用に注意が必要なケースもあるので、購入する際は薬剤師などのアドバイスを聞いておこう。

 本格的に漢方治療を受けたい人は、医療機関で漢方に詳しい医師に診てもらうのがベスト。参考になるのが日本東洋医学会の漢方専門医だ。西洋医学的な目線を持ちつつ、漢方の専門的な治療もできる。学会のホームページから検索が可能だ。

「漢方は漢方医学的な知識をもとに、自覚症状をとることを目的にした治療です。これまで挙げた症状のなかには、西洋医学的な治療が必要な病気が隠れていることもあるので、一度は病院で検査や診察を受けることが大事です」(東海大学医学部専門診療学系漢方医学教授で、『わが家の漢方百科』[東海教育研究所]の著者・新井信さん)

週刊朝日 2017年6月23日号より抜粋