京橋 婆娑羅のトマトすきやき/鍋にニンニクとオリーブオイルを入れ、トマト、玉ネギを並べて割り下を注ぐ。野菜を覆うように和牛スライスを並べてじっくりと加熱。アクセントに生バジルを添えて仕上げる。最後のシメはタリアテッレ。単品1人前4500円(税別)、2人前から。コースもある(撮影/山本倫子)
京橋 婆娑羅のトマトすきやき/鍋にニンニクとオリーブオイルを入れ、トマト、玉ネギを並べて割り下を注ぐ。野菜を覆うように和牛スライスを並べてじっくりと加熱。アクセントに生バジルを添えて仕上げる。最後のシメはタリアテッレ。単品1人前4500円(税別)、2人前から。コースもある(撮影/山本倫子)

 著名人がその人生において最も記憶に残る食を紹介する連載「人生の晩餐」。今回、歌舞伎俳優の坂田藤十郎さんが選んだのは、京橋 婆娑羅(ばさら)の「トマトすきやき」だ。

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 初めて食べたのは、もう15年以上前。すき焼きにトマトなんて、どんなものだろうと思ったら、あまりのおいしさにびっくりしました。トマトの酸味が爽やかで、お肉との相性は最高です。玉ネギが、だしと割り下を吸いながら次第に飴色になってね。本をただせば、店の総料理長、小山裕久さん宅の家庭料理なんだそうですよ。

 以来、私も妻(扇千景さん)もすっかり魅了されましてね。いろんな方をお連れしては、驚かせて楽しんだものです。亡くなった市川団十郎さんはトマトが大好物で。「こんな食べ方があるんですね!」と喜んでいらしたのを思い出します。妻が参議院議長だったころ、毎春、都内の全大使館に招待状をお出しして、議長公邸で「桜を愛でる会」を催しました。そのときの料理も「トマトすきやき」に出張してもらって。私も羽織袴でご接待したものです。

 思えば、このすき焼きとも長いお付き合いです。仕事仲間や家族、みんなの絆を温めてくれた、そんな料理だと思いますね。

「京橋 婆娑羅」東京都中央区京橋3−1−1 東京スクエアガーデン1−5/営業時間:【平日】11:00~14:00L.O.、17:30〜22:00L.O.【土祝】11:30~14:30L.O.、17:30~21:00L.O./定休日:日

週刊朝日 2016年11月11日号