年をとると判断力や記憶力の低下から運転中の事故のリスクは高まる。とはいえ、足腰が弱った身にはちょっとした買い物や病院まで歩くのもつらい。昨今、話題に上る相乗りのUber(ウーバー)など新たな交通手段は、どれほど高齢者の助けになるのだろうか。ジャーナリストの桐島瞬氏がその実態を探る。
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日本海を望む京都府の京丹後市丹後町で一人暮らしをする小倉美知子さん(88)は、5月から町内でサービスを始めたライドシェアのUberの常連客になった。
「病院へ行くときなど月2回ほど使っています。路線バスの200円よりは高いけど、タクシーの半分ぐらいの値段で目的地まで行ってくれるのがありがたい。運転手もご近所のよく知った人だから安心です」
ウーバーは、自家用車の持ち主が空いた時間に、有料で客を送迎するサービス。スマートフォンのアプリで配車依頼と決済ができることから、世界各地で需要が急増した。
だが、日本では法律上「白タク」になってしまうため、過疎地の公共交通空白地帯に限って運行できる。現在のところ、丹後町が唯一のサービス提供地域だ。
町は人口の4割が65歳以上。2008年にはタクシー会社が撤退し、公共交通機関は本数の限られた路線バスか、前日予約制のデマンドバスしかない。車を運転しない足腰の弱ったお年寄りは移動手段に困っている。小倉さんもそんな一人だったため、ウーバーを使い始めた。
それまで携帯電話すら持ったことがなかったが、離れて住む娘がiPhoneを買い与え、操作方法まで教えてくれたという。
記者もウーバーを使ってみた。スマートフォンにアプリを入れて登録。配車を頼むボタンをクリックすると、迎えに来る車種、ナンバープレート、運転手の顔写真、車の現在地まで地図上に表示される。
しばらくすると白のプリウスが到着した。18人いるドライバーのうち、坂田基司さん(66)が来てくれた。市内の名所巡りを頼むと、距離9キロを80分近くにわたり案内してくれ、料金は1379円。タクシーの半額以下だった。ウーバー社が配車や課金システムの利用料金を差し引き、残りがドライバーに支払われる仕組みだ。