今回のアンケートからは、検診への医師の見方が浮かび上がる。受診理由で意外に多いのは、「職場での推奨・義務付け」「クーポンや案内が来る」など、消極的なとらえ方だ。80人近くがこうした回答を寄せている。

 目的に積極的な理由を挙げたのは34人。「早期がん診断に役立つ(神奈川県・血液内科医)」「早期発見で治せるがんは多い(兵庫県・精神科医)」などの回答だ。子宮頸がんの検診を受けている東京都の30代の産婦人科医は「若年でなりやすく、早期発見が大事」として、受診の意義を感じているという。

 身内や知人をがんで失う経験を挙げた医師もいた。

「先輩医師が大腸がんで亡くなった(大分県・呼吸器内科医)」「両親と祖父母ががんで亡くなった(神奈川県・一般内科医)」などだ。

 また、「ヘリコバクター・ピロリ菌が陽性で、胃がん検診(福岡県・産業医)」「慢性胃炎のため、定期的に内視鏡検査(兵庫県・麻酔科医)」など、具体的な理由を挙げる回答も。国の指針の5種類のがん以外に、前立腺がんを調べるPSA検査について、「PSAは信頼できる」と答えた医師もいた。

 聖路加国際病院血液内科の山下卓也医師(50代)は、胃と大腸の内視鏡検査、肺のX線検査、肝臓がんなどを調べる腹部超音波検診を人間ドックで受けている。5年ほど前からで、「がん検診の対象年齢を迎えて、様々な疾患に罹患するリスクを感じたから」という。

 担当医の指示に従い、胃は年1回、大腸は2~3年に1回の間隔で受けている。
「早期に診断されたがんは、身体的に負担が少ない治療で完治を期待できる可能性がある。進行がんに対する大がかりな手術や、手術後の化学療法による身体的、精神的、経済的な負担を回避できるならば、がん検診のメリットは大きい」

 自身の専門は血液がんの骨髄移植。がん治療に関わる立場から「がんを治療で克服した人(がんサバイバー)はその後に、新たながんがほかの部位にできるリスクが高い。特にがん検診を受けるべきです」とアドバイスする。

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