妻:むしろそれで、自然にしていられなくなっちゃった。同じ場所にいても、あっちとこっちで、別々のグループにいたりして。

夫:彼女のことを意識したのは、2000年のシドニー五輪の時でしたね。

妻:1カ月間、リポーターとして現地にいたんです。

夫:その間、いつものグループのどんちゃん騒ぎは続いてたんだけど、彼女はいない。がんばってる姿はテレビで見てたんですけどね。あれ、なんか寂しいな。いるべき人がいないぞ、と。

妻:帰国したら彼がプレゼントをくれたんですよ。

夫:何かあげたくなって。

妻:「わしからの金メダルじゃ!」って。プラチナのブレスレットだったんですけど、箱を開けた瞬間、色を見て「あれ、金じゃない」って言っちゃった(笑)。

夫:金より上なのに……。

妻:私が自分の気持ちを意識したのは、彼より少し早かったかも。彼は97年に日ハムから戦力外通告されて、98年に巨人軍のテストを受けたんです。そのころ、一緒に食事したんですが、彼、ちっとも変わらなかったんですよ。戦力外通告のことも、誰のせいにもしないし、愚痴も言わない。それまでいろんな人を取材してきましたけど、あれほど強く、もう一度マウンドに立ってほしい、って思った人はいませんでした。

夫:おかげさまで、巨人に入って。結局98年には引退しましたけどね。

週刊朝日 2016年6月10日号より抜粋

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