「TC値が高く、アキレス腱部分に黄色腫という特徴的な症状があり、父親に心筋梗塞の病歴があったためFHと診断しました」

 FHは遺伝子の異常で血中のLDL‐Cが肝臓に取り込まれにくくなり、高コレステロール血症になってしまう。遺伝性のため家族にもFHの人がいる確率が高く、同じく家族内に心筋梗塞の経験者がいることが多い。FHの頻度はけっして低くない。

 一般的に高コレステロール血症の治療は、生活習慣の改善から始める。2~3カ月続けても効果がなければ薬物療法を始める。現在、第一選択薬となっているのが「スタチン」という薬だ。

 スタチンは、肝臓がコレステロールをつくる働きを抑える作用をもつ。肝臓には体内のコレステロール量を調整する役割があるため、肝臓内でつくる量が少なくなると、血液中から調達、その結果、血中のコレステロールが減るというしくみだ。レギュラータイプのスタチンではLDL‐Cを約25%、それより効果の高いストロングスタチンでは約40%下げられる。

 堤さんは当初、レギュラースタチンを常用量より多めに服用。その後、2000年に登場したストロングスタチンに替え現在も服薬し、LDL‐C130~140を維持している。だが日本動脈硬化学会がFHの治療指針として掲げる数値はLDL‐C100未満だ。

 FHは一般的な高コレステロール血症に比べて治療効果が出にくく、スタチンだけでは不十分なことも多い。そこで、16年4月以降に保険で使えるようになる予定の「レパーサ皮下注」という新薬に期待が寄せられている。この薬はLDL‐Cを肝臓に取り込みやすくする働きがある。スタチンの効果が低い患者を対象に、スタチンとの併用を前提に使用が見込まれる。堤さんもこの薬が使えるようになったら、ストロングスタチンに上乗せする予定だ。

週刊朝日  2016年4月29日号より抜粋