日本人の視点からフランス人の生活ぶりを描いた漫画で人気を博す夫・じゃんぽ~る西さん。妻の西村・プペ・カリンさんは日本が大好きで、それまでのキャリアを捨てて日本に移住してしまったフランス人ジャーナリスト。文化や言語、何もかもが違うふたりが、日本で結ばれ、子どもを授かり育てる日々は、結婚して4年経つ今も、発見と驚きの連続だという。
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夫:あなたはもともと、日本で出産するつもりだったんだよね?
妻:日本で10年以上暮らして、日本人と結婚して。だったら日本で出産するのが自然だと思ったんです。フランスの医療はとても合理的だし費用負担もものすごく少なくて済む。私にとっては母国です。それでも日本で産んでよかった、と思っています。
夫:むしろ子連れでフランスへ帰ったときのほうが大変だもんね。
妻:日本は本当に、育児しやすい国です。デパートでも駅でも、トイレにはおむつを替える台があります。フランスではベビーカーを押してカフェに入っただけで、いやな顔をされることもある。決して子連れに優しい国じゃありません。その点、何事にも正確で、公共サービスもしっかりしていて、日本は最高です。
夫:それに、日本で子どもを育てることで、ますます日本をよく理解できるようになった、とも言えますね。
妻:子育てを通して、新しく知った言葉や文化がいっぱいあります。子どもの言葉から「滑り台」とか「どいて!」とか。育児する中で「つかまり立ち」「寝返り」も覚えました。私、「日経平均株価」とか「不良債権」とかは知ってたんですが、日常会話に弱かったので。
夫:日経新聞で日本語を覚えたんだもんね(笑)。
妻:でも、本当に子どもの能力っていうのはすごいと思います。生まれてから話ができるようになるまでの間に、私から聞いた言葉をすべて覚えてるんです。
夫:使えないだけで、頭にたまってたんでしょうね。
妻:思わず私が口にしてしまった悪い言葉も覚えていて、息子の口から出てくる。はっとさせられます。ちゃんと使い方も正しくて、ああ、理解してるんだな、と。
夫:僕には日本語で、妻にはフランス語で、自然に使い分けてますよ。
妻:この家の中に言語が2種類あることを把握してるんですよね。
夫:息子は今3歳ですが、今ならかろうじて彼のフランス語はわかる。だからこのまま、彼の言語習得についていけば、僕も少しはフランス語ができるようになるかな、と期待してるんですけどね。
妻:これからどんどん大きくなって、いろんなこともあるでしょう。東京オリンピックもあるし。母親としてもジャーナリストとしても、楽しみですね。
※週刊朝日 2016年3月25日号より抜粋