甲子園 直木賞作家・木内昇が推す逸材 (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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甲子園 直木賞作家・木内昇が推す逸材

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木内昇(きうち・のぼり)直木賞作家。1967年、東京都生まれ。代表作に『漂砂のうたう』『櫛挽道守』。高校、大学とソフトボール部で鳴らした野球通。明治期の一高野球部が舞台の「球道恋々」を現在、小説新潮に連載中(撮影/写真部・松永卓也)

木内昇(きうち・のぼり)
直木賞作家。1967年、東京都生まれ。代表作に『漂砂のうたう』『櫛挽道守』。高校、大学とソフトボール部で鳴らした野球通。明治期の一高野球部が舞台の「球道恋々」を現在、小説新潮に連載中(撮影/写真部・松永卓也)

漂砂のうたう

木内昇著

978-4087451306

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櫛挽道守

木内昇著

978-4087715446

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 高校、大学とソフトボール部で鳴らした野球通の直木賞作家、木内昇(のぼり)氏。夏の甲子園の模様を観戦記として綴った。

*  *  *
 1回戦から実力拮抗した好試合続出である。台風のため夏の大会史上3度目、54年ぶりの開幕順延(2日順延は史上初)、前橋育英や済美といった注目校の地方大会敗退とどこか波乱含みの様相を呈した今大会、早くも開幕戦に登場したのが春の覇者・龍谷大平安だ。

 対するは春日部共栄。浦和学院はじめ強豪揃いの埼玉激戦区を勝ち抜いたチームだが、ここは春のメンバーが残る龍谷大平安優勢か、との見立ては初回にくつがえされる。共栄打線が爆発し5点を先取したのだ。

「おかげで、緊張せず投げられた」とは春日部共栄の3年生左腕・金子。上体を柔らかく使った、ややサイド気味のフォームはコンパクトで腕の振りも鋭い。球速は130キロ台と特別速くはないが、打席に立つと球の出所が見えにくく、タイミングがとりづらそうだ。

 投球テンポも速い。ただこれはおそらく捕手・守屋が返球リズムで構成しているもの。調子がよければ次々投げさせ、制球が乱れてくると巧みに間をとり、打者にペースを掴ませない。

 捕手はあくまで投手が十二分に力を発揮できるよう最大限に配慮しつつ、試合進行の手綱を握る心理的にも高度なポジション。投手には亭主関白タイプもいれば、恐妻家タイプもいる。個々の性質を無視して捕手が我を貫くと、「うちのはよく出来た女房なのですが、それが私にはかえって気詰まりで……」というオトーサン的状況に投手は追い込まれかねない。

 その点、春日部共栄バッテリーは息が合っていた。「ほぼ同じことを考えているので守屋のリードに任せた」と金子。まとまりのよさで優勝候補を退けた。

 静岡の3年生右腕・辻本と2年生捕手・堀内のバッテリーも相性の良さは群を抜いていた。粘りの星稜に屈しはしたが、堀内がマウンドに駆け寄るとポーカーフェースの辻本が表情を和らげる様子が印象的だった。

 それにしても、さすが甲子園。名選手が目白押しだ。守備では、龍谷大平安の遊撃手・石川が目立った。もともと堅守と名高いが、実際球場で見ると三遊間が狭く見えるほど存在感(威圧感?)がある。配球に合わせ細かに守備位置を変え、時折足を開いて肩入れをする。打者はたぶん「あそこは抜けん」と自然と恐れをなすのではなかろうか。

 天候不安定のため、けっして良好とはいえないグラウンドコンディションに巧みに対応したのが、2日目日南学園と対戦した東邦の二塁手・松原。ゴロを捕球するも足場が悪かったのだろう、駆け込んできた遊撃手・鈴木にすかさずトス。鈴木が一塁に送球するという見事な連係を見せた。あ・うんの呼吸の3年生二遊間は今後も要注目である。


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