82歳の巨匠がつくりあげた、伝説の“黄金のスープ”
グラスの中で微かに泡立ちながら輝く黄金の液体。それを目にした誰もが“シャンパン”だと思うだろう。だが、そこから立ち上るのは、どこか懐かしく食欲をそそる香り。これぞ“黄金のスープ”と呼ばれる幻の逸品、「ダブルコンソメスープ」だ。シャンパングラスで供される一杯は、ムッシュ嶋村の料理人生の結晶であり、美食の集大成である。 このスープをつくった“ムッシュ嶋村”こと嶋村光夫氏は1930年生まれの82歳。元ロイヤルパークホテル総料理長で、現在はフランス農事功労賞受賞者協会会長を務める、日本のフランス料理界の重鎮である。「一流の料理人になる!」という志を抱き、高校卒業後に料理の道へ。厳しい修行時代を経て、帝国ホテル、ホテルオークラなどで研鑽を積んだ。 そんなムッシュの名を世界にとどろかせたのは2005年、外務省主催の晩餐会でのできごとだ。来日中のシラク仏大統領(当時)が、晩餐会で口にしたスープのあまりの美味しさに感動し、自らムッシュに面会を求めたのだという。大統領がコックコートを着た料理人に面会を求めることなど前代未聞。ムッシュは“大統領と面会した初めての日本人の料理人”として知られるようになった。これまでに、先に挙げたフランス農事功労騎士章ほか、30を超える国内外の賞を数多く受賞している。 ムッシュが“黄金のスープ”をつくり始めて50年。ダブルコンソメの名のとおり、「スープを2回炊き上げる」ことで、奥行のある深い味わいと黄金の輝きが生まれる。現在は特別な席でしか味わうことができず、一杯で5千円ほど。製法は当然、秘中の秘だが、ムッシュがその一端を明かしてくれた。 「まず、素材(肉)の選び方には徹底的にこだわるね。そうやって選んだ肉を、長いものだと2週間熟成させる。すると良いアミノ酸が出てくるんだよ。それをぬるいお湯で焚いて、丁寧に灰汁をとる。すると上質なブイヨンができるんだ。あとは想像に任せるよ」。 こうして愛情をかけ、磨き抜かれたスープは、まさに絶品! 「人を本当に魅了する、本物の味に辿り着けるのは言ってみれば“錬金術”みたいなものなんだよ。最近では便利な機械もあるし、昔に比べて料理が簡単になった。でも、料理っていうのは極意があってね、技術だけじゃないんだよ。それはどの道にも通ずることだけど、技術と心が合わさったところに本物が生まれる。それができるのが錬金術ってことだ」 そのムッシュ自身が「これが最後」というディナーショーが8月30日(金)、東京・水天宮のロイヤルパークホテルで開かれる。ムッシュのトークとともに、至高のフランス料理と“幻の一杯”を堪能できる、またとない機会だ。会費は料理、飲み物、消費税、サービス料込みで1人2万5千円(残席わずか)。 申し込みは26日までにエンパシージャパンへ。
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