
かなわない
「こんなことまで書き始めて。私は誰に何を知ってほしいと思っているのだろうか」。読むことに罪悪感を覚え、戸惑いながらも一気読みしてしまった一冊だ。 著者は写真家で2児の母。夫は20歳以上年上の元アル中のラッパー。2011年から15年の日記や散文をまとめたものだ。 育児に苦悩すれば物を投げ飛ばす。実母との関係に悩んだ過去から、理想の家族像を実現できないからと離婚を夫に申し出る。ライブに夢中になり平気で家を空ける。夫以外に好きな男性もできてしまう。夫に平然とその事実を伝える。 「とんでもない母親だ」との声も聞こえてきそうだ。だが、現代の女性は「妻であり母であり女であること」を求められる上に、キャリアを磨くことまで望んでいようがいまいがお上から突きつけられる。努力しても「叶わない」ことだらけである。 複雑な感情の起伏を無鉄砲に綴っても、飽きさせないのはアーティストだからか。大文字で語られるべき物語ではないが、女性を取り巻く真実が濃縮されている。