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淡路島男女5人殺害 「通報しないで」言い残した警官
※イメージ
今年3月に兵庫・淡路島で発生した男女5人殺害事件。犠牲となった平野毅さん(享年82)と恒子さん(同79)夫妻の娘、Aさんは、H容疑者(40)は事件まで度々、地元で問題を引き起こしてきたという。ジャーナリストの今西憲之と本誌取材班がレポートする。
「お宅は風俗店ですかという電話がひんぱんにかかるようになりました。ワケがわからず、電話が繰り返され、亡くなった両親も不安がっていました。そして知人が『ネットでも同じ内容の書き込みがあった』と言うのです。調べると、H容疑者が書いていました」
そしてH容疑者は、いきなり毅さん宅にやってきては、「俺の悪口を言っているのか」と食ってかかり、写真を勝手に撮影するようになった。同じく3人が殺害された平野浩之さんの家族に対してもネットで中傷し始めた。
また、知人が来ると、奇声をあげたり、ジロジロと睨み付ける。朝からバイクのエンジンをふかして騒音をまき散らすなど、いやがらせに及び、不審な行動を繰り返すようになる。
「H容疑者の父親に話をすると、『確かにネットの書き込みは息子が書いた。消すように言うので』と言いつつ『妄想がきつくて』などと言い訳していました」(Aさん)
そして2009年7月、H容疑者は毅さんの孫、Bさんともトラブルになる。
一方的に悪口を言い、バイクのエンジン音を響かせたので、業を煮やしたBさんがH容疑者に向かっていくと、バイクをいきなり発進させたという。
「Bはバイクを何とかよけて反撃。鉄パイプを持ち出し、H容疑者と乱闘。洲本署が駆けつける大騒ぎになりました」(Aさん)
その後、Bさんが殴ったことを認めて罰金刑となり、洲本署もH容疑者と周囲のトラブルを認識したという。
「ネットに書かれたことを名誉毀損で刑事告訴してくれれば、こちらも動くことができる」と洲本署の勧めで毅さんらはそのとおりにした。そして10年12月、H容疑者は逮捕。
不起訴処分だったが、そのまま兵庫県明石市内の精神科病院に措置入院することになった。
平穏な日々が続き、毅さん宅では家のリフォームを始めた。その日々が今年2月14日、「きぇ~」という突然の奇声で破られた。
地元に舞い戻ったH容疑者がカメラで近所を撮影しながら、奇声をあげていたのだ。
その様子を目撃したBさんによると、H容疑者は重そうなリュックサックを背負って、目の焦点が合っていなかったという。
「どう見ても病人。これは大変なことになったと思いました」(Aさん)
戦慄が走ったAさんらはすぐにH容疑者の父親に話を聞きに行った。そのときの会話を記したメモが今もAさんの手元にある。
≪明石で入院していたがトラブルで淡路島に帰ってきた≫≪帰ってきた直後はおとなしかったが、病人という認識がなく服薬も拒否して徘徊≫≪金銭、パソコンは与えず電気も切っている。何かあれば警察に動いてくれるよう連絡した≫
その話で、より不安に思ったAさんらは、近所の駐在所に連絡。H容疑者の状況を調べてほしいと依頼する。
そして、2月15日に再度、申し入れをしてパトロールを強化してもらうよう要請したという。
2月16、17、20日の駐在所や洲本署とのやり取りを記したメモには次のように記されていた。
≪民事裁判が適切≫≪一般的に統合失調症など精神疾患があれば逮捕できない≫
≪Hに刺激を与えてないでしょうねと言われ、していないと答えた≫
同21日午後2時ごろ、周辺をウロウロしていたH容疑者に睨まれた恒子さんが恐ろしくなり、110番通報したときのメモにはこう記されていた。
≪Hに睨まれたくらいで通報しないでと言い残して、駐在所の警官は帰った≫
そして同22日には毅さんに対し、駐在所の警官がこう言ったという。
≪Hは先方さんの大事な息子。刺激しないで≫
Aさんはこう言う。
「被害者として不安なのに、刺激するなとH容疑者側の肩を持つようなことばかり、警官は言う。根本的な解決にも動く気配はなく、裁判だ、市役所になどとたらいまわしにするようなことばかりで、不安は日々募っていきました」
(今西憲之、本誌取材班=牧野めぐみ、小泉耕平)
※週刊朝日 2015年8月7日号より抜粋
週刊朝日
2015/07/31 07:00