

高橋真理子
(たかはし・まりこ)
プロフィール
ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネータ―。1956年生まれ。東京大学理学部物理学科卒。40年余勤めた朝日新聞ではほぼ一貫して科学技術や医療の報道に関わった。著書に『重力波発見! 新しい天文学の扉を開く黄金のカギ』(新潮選書)など
高橋真理子の記事一覧


家事の手抜きまで理詰めの材料科学研究者(42) 研究も子育ても「完全につながっている」
材料科学の世界では、より性能の良い、または、より扱いやすい、要するに少しでも優れた材料を求めて世界中の研究者が実験を重ねている。それを報告する論文からグラフを集めて実験データを抽出し、データベースを作る。この構想を打ち出し、仲間を引き入れ2015年からプロジェクトを動かしてきたのが茨城県つくば市にある物質・材料研究機構(NIMS)主任研究員の桂ゆかりさんだ。「他人の論文のデータを集めるなんて研究とはいえない」という声もあったなかで、「これは必要」と確信して進んできた。メーカー研究者の夫とともに小6と小5の子どもを育てる。「原理に立ち返って考えるのが大事というのは、研究も子育ても同じ」。家事と料理の手抜き法も理詰めで考えて実践中だ。(聞き手・構成/科学ジャーナリスト・高橋真理子)

「そんなん無理」を超えてきた女性眼科医(62)の歩み 「ブルドーザーに乗ったサッチャー」と呼ばれて
高橋政代さんといえば、世界で初めてiPS細胞を使った目の難病手術のチームを主導した眼科医として知られる。だが、それは彼女の一面に過ぎない。目の病気は、軽症から重症まで多様だ。そのすべての患者のありとあらゆるニーズに応えること。それを「出口」と見据えて、京都大学から兵庫県神戸市の理化学研究所(理研)に移り、さらに理研を飛び出して会社社長になった。世界初の手術は2014年。そのころついた「ブルドーザーに乗ったサッチャー」というあだ名を結構気に入っているという。若い方のために説明すると、サッチャーとは「鉄の女」と呼ばれた英国第71代首相である。(聞き手・構成/科学ジャーナリスト・高橋真理子)

iPS細胞初移植の女性医師が50歳で目覚めた“4次元”の重要性 医療システム改革を大胆提言
世界初のiPS細胞を使った眼科手術を主導した高橋政代さんは、再生医療をはじめ費用が高い最先端治療の普及には医療制度の変革が必要だとアピールしている。日本の医療には、保険診療と自由診療があり、自由診療はお金がかかるほか、医療の質が担保されていないという課題がある。そこに学会が関与する形で民間保険を入れて、自由診療の枠組みを利用して高額な先進的医療を多くの人が受けられるようにすべき、というのだ。「国民皆保険」という世界に誇る制度をこれで守れると位置づける。未来を見据えて大胆に進み続ける高橋さん。ここまで、どんな道を歩んできたのだろう。(聞き手・構成/科学ジャーナリスト・高橋真理子)



女子学院で「人と違うことは素晴らしい」 東大3年で「確率論に感動」 女性数学者を導いた出会い
東京大学大学院数理科学研究科准教授の佐々田槙子さん(38)は、「数理女子」というウェブページ(http://www.suri-joshi.jp/)で女子生徒やその親たちに数学の魅力を発信しつつ、数学界にいる人たちがジェンダーや社会の問題についてもっと気楽に語り合えるようにと働きかけてきた。専門は確率論、統計力学。小学生と保育園児を銀行勤務の夫とともに育てながら、1人の時間が取れたときに「ワーッと」数学を考える日々。「女性数学者があまりに少ない」という日本の現状をなんとか変えたいと自然体で突き進む。(聞き手・構成/科学ジャーナリスト・高橋真理子)

女性数学者38歳が東大数理科学研究科にもたらした変化 「数学の魅力をたくさんの女子へ」
「数理女子」というウェブページ(http://www.suri-joshi.jp/)がある。副題は「数学の魅力をたくさんの女子へ」。その生みの親・育ての親の一人が東京大学大学院数理科学研究科准教授の佐々田槙子さん(38)だ。数学界にいる人たちがジェンダーや社会の問題について気軽に語れるオンライン談話会の世話人もしている。「日本のほとんどの数学者って、数学の話以外、誰がどこの大学に移ったっていうような話しかしない」と以前感じ、できるところから働きかけを始めた。東大数学科卒、既婚、2児あり。日本を変えるチャレンジを果敢に続ける佐々田さんに聞いた。(聞き手・構成/科学ジャーナリスト・高橋真理子)

「日本では肩に力が入っていたな」 女性生物物理学者47歳がデンマークで研究生活を続ける理由
御手洗菜美子さん(47)は2009年からデンマークのコペンハーゲン大学ニールス・ボーア研究所の准教授を務めている。九州大学の助教から転じた。「私は日本にいたとき直接的に女性差別的なことを言われたことはない。でも、ほかの女性がそういう扱いをされるのを見てきた」。だから、スキを見せたら自分も同じ扱いをされると肩に力が入っていたと、デンマークに行ってから気づいたという。かの地の研究グループの男女比はほぼ半々。仕事で日本を訪れた機会に東京でインタビューすると、「ずっとデンマークで研究生活を続けます」ときっぱり語った。(聞き手・構成/科学ジャーナリスト・高橋真理子)
