

大友博
プロフィール
大友博(おおともひろし)1953年東京都生まれ。早大卒。音楽ライター。会社員、雑誌編集者をへて84年からフリー。米英のロック、ブルース音楽を中心に執筆。並行して洋楽関連番組の構成も担当。ニール・ヤングには『グリーンデイル』映画版完成後、LAでインタビューしている。著書に、『エリック・クラプトン』(光文社新書)、『この50枚から始めるロック入門』(西田浩ほかとの共編著、中公新書ラクレ)など。dot.内の「Music Street」で現在「ディラン名盤20選」を連載中
大友博の記事一覧


第43回 『24ナイツ』エリック・クラプトン
1980年代が終わろうとしていた、そのぎりぎりの段階で、クラプトンは原点回帰を強く意識したものと思われるアルバム『ジャーニーマン』を発表している。そして、そこで得た手応えが、悲劇を乗り越える過程で、ある種の偶然にも助けられて手にすることとなる90年代の驚異的な成功につながっていく。そのことに関してはまた詳しく書くが、ちょっと視点を変えてみると、熱心なファンの方は誰もが、ある変化に気づいていたはずだ。当時の精神状態と大きく関わるものであったのか、40代後半の彼はあらためて髪を長く伸ばし、アルマーニやベルサーチのスーツを独特の感覚で着こなしてステージ立つことが多くなったのである。特注だったのか、贈物だったのか、なんとギターのストラップまでもが、ベルサーチ製だった。






第37回 『アナザー・ティケット』エリック・クラプトン
ライヴ・アルバム『ジャスト・ワン・ナイト』の発売(80年4月)と前後して、クラプトンは、ゲイリー・ブルッカーも含むイギリス人バンドとともに地元サリー州で新作のレコーディングを開始している。しかし、どうやら思うような結果が得られなかったようで、さらには、その直後に報せが届いたカール・レイドルの急死に強い衝撃を受けたこともあり、そこで残された音源は未発表のままに終わった。その後、カールへの想いも込めて新たに曲を書き下ろしたクラプトンは、ひさびさにトム・ダウドと合流し、7月から8月にかけて、バハマのコンパス・ポイント・スタジオで、アルバムを仕上げている。長く在籍してきたポリドール・グループからの最後の作品ということになる『アナザー・ティケット』だ。

