写真家・片山真理 木村伊兵衛写真賞の受賞前とその後 (1/3) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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写真家・片山真理 木村伊兵衛写真賞の受賞前とその後

shell(撮影:片山真理)

shell(撮影:片山真理)

 写真家・片山真理さんの「第45回木村伊兵衛写真賞受賞作品展」が1月19日から東京・新宿のニコンプラザ東京 THE GALLERYで開催される(大阪は2月25日~3月10日)。片山さんに聞いた。

【写真】片山真理さんの作品

 実をいうと、私はずっと片山さんに話を聞いてみたいと思っていた。特に昨春、木村伊兵衛写真賞を受賞した直後、ある雑誌の記事を読んだときだった。そこには作品の中に写る片山さんを見て「美しいと思った」と書かれていた。筆者は本当にそう思ったのかもしれない。しかし、私はその文章を目にした瞬間、心の中で悪態をついた。(この偽善者め。浅はかなやつめ)。

 写し出されていたのはたくさんの不思議なオブジェに囲まれた片山さんの姿(今回の展示作品「shell」)。彼女が周囲にまったく埋もれず、強烈な存在感を放っているのは、両足を切断したその姿が異彩を描いていたからだ。人は自分とは違う体つきに敏感に反応する。

 展覧会に在廊していると「(来場者から)まず、手と足を確認されるんですよ」と言う体。

 それに対するオブラートに包んだようなもの言い。それが心をざわつかせる。
beast(撮影:片山真理)

beast(撮影:片山真理)

「若いときはやばかったです。それをいま、やり直している」

 以前、片山さんのことをインターネットで検索していたときだった。(あっ)。声にならない叫びとともに体が固まった。そこには彼女の体重を支えきれないために切断する前の素足が、器具をつけて歩行する姿が映し出されていた。(俺の息子じゃん……。似ているなんてもんじゃない、同じだよ)。

 そう、私の息子は片山さんと同じ先天性の四肢疾患だ。生まれたばかりのわが子を見た瞬間、変な足だと思った。でも考えたくなかった。しかし数日後、医師から告げられた。「成長しても歩けるようにはなりません」。たぶん、一生忘れない言葉だ。

 インタビュー中、片山さんが言った。「子どもが生まれて、親の気持ちがわかりましたよ」。「そうでしょう」と、私が返す。立場は違うが、仲間ができたようで、正直、うれしい。

 片山さんが自分の体とどう向き合い、作品をつくってきたのかとても知りたかった。むろん、そこには多分に私情をはさんでいる。

「性格、歪みませんでした?」。率直に聞いてみる。疾患に対するコンプレックスは重くのしかかり、心を歪めてしまう。そこへ自分を閉じ込めてしまい、抜け出せなくなってしまう子どもたちが少なくないのだ。そこからどうやって片山さんは羽ばたくことができたのか知りたかった。

「ははは。むちゃくちゃ歪んでますよ。もし、私がもう一人いたら、絶対に友だちになりたくないな、って思いますもの。いいかげんだし、雑だし。ああー、もう夫がかわいそう(笑)」

 そう言ったうえで、付き合いが長いという夫に対して感謝の言葉を口にする。

「まわりの人が、夫も含めて全員、心が広いので、私の人間関係上のトライアンドエラーを受け入れてくれている。若いときはやばかったです。それをいま、やり直している感じですね」

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